投稿

プロダクトやサービス開発における様々なズレを解消するためのフレームワークの一つとして「キャンバス」があります。この記事を読まれている方であれば一度は耳にしたことがあるかもしれませんが、Business Model Canvas(ビジネスモデル・キャンバス)Lean Canvas(リーン・キャンバス)などが有名です。キャンバスは、複雑な情報を一枚絵に構造化してわかりやすくしてくれているので、意思決定を加速させてくれる非常に便利なツールです。

他にはどんな便利なキャンバスがあるんだろう?と興味本位で2〜3年かけて情報収集をしてみたところ、約200種くらいありました。時代の変化と共にインスピレーションを受けながら増えていったことを想像すると、多分もっとあるでしょう。それらは自身の Pinterest でコレクションとして今も集めています。キャンバス集めは、もはや趣味です。

その中にはあまり知られていないけれども、あらゆる課題を解決してくれるキャンバスが沢山埋もれています。ただ、あまりにも数が多いので、今回はその中でも自分の中でヒットだった5つのキャンバスをご紹介したいと思います。

  1. Social Media Strategy Canvas(ソーシャルメディア戦略・キャンバス)
  2. The Brand Canvas(ブランド・キャンバス)
  3. Team Canvas(チーム・キャンバス)
  4. Project Canvas(プロジェクト・キャンバス)
  5. Workshop Preparation Canvas(ワークショップの企画のためのキャンバス)

それでは一つ一つ見ていきましょう。

1. Social Media Strategy Canvas

ソーシャルメディアは今となってはビジネスにとってクリティカルな、かつゲームチェンジャーともなり得るマーケティングチャネルです。なぜなら、ソーシャルという文字通り、自社とクライアントやユーザーを繋ぐ大事な接点となっているからです。プロダクトマーケティングの観点からも、PSF(Product-Solution Fit)を探る上で重要な役割を果たします。

Social Media Strategy

Copyright © 2015 Marketing Solved

  • どのソーシャルメディアから始めればいいかわからない
  • どれが相性がいいのかわからない
  • 何を投稿すればいいかわからない
  • 以前かじったことがあるけれど、うまくいかなくて辞めた

このキャンバスは、上記のような身近な課題をシンプルに解決してくれます。プライベートではソーシャル・ネットワーク・サービスを使い倒しているけれども、事業戦略の位置付けでいざ初めてみるとなると、どうしたらいいかわからないときがあります。僕自身も以前 Facebook マーケティングをやったことがありますが、四苦八苦してしまい、今これがあったら便利だったんだろうな、と思いました。

このキャンバの考案者によると、3ヶ月もすれば効果が見え始めるとのこと。Twitter のフォロワーが何千人増えたとか、ソーシャルメディア経由の収益をデイリーで挙げることができた、とかとか。

キャンバスにまとめられている項目一覧:

  • ユーザー情報(デモグラに加えて、好むブランドや興味など)
  • 月間目標(何を達成したいか、何をPRしたいか)
  • 目標を達成するための月次・週次・日次タスク
  • 投稿する内容やコンテンツ
  • 投稿するタイミング(過去のデータを元に最適化)
  • 投稿する頻度
  • 投稿先のプラットフォーム

テンプレートのダウンロード:

How To Create a Fail Proof Social Media Strategy That’s Simple and Gets Results – Marketing Solved

If you’ve decided it’s time to get serious about social media, I’m here to tell you – YES, it is time! Social media has been a real game changer for businesses and for one reason, it’s SOCIAL. It really is the connection between you and your future clients.

2. The Brand Canvas

ブランド戦略という言葉を耳にすることがありますが、ブランドの範囲がかなり広いため、どのようなアクションが求められ、実行されるべきなのかイメージが湧かないときがあります。

ブランドと聞くとロゴ、つまりは CI を真っ先に想起しますが、モノよりもコトの時代となった今、Apple Watch に代表されるようにシンボルだけではなく、人の生活をより豊かにするためのストーリーであったり、人々の生活に根付いたコミュニケーションが求められます。

Lean Branding Canvas

Copyright © IGNITION Framework

このキャンバスは、それらを構成する要素を細かく分解して一つのブランドを作り上げることができると思います。ガイドラインに等しい項目もあるため、デザイナーやマーケティングの部署と協業しながら埋めていくといいかも?

キャンバスにまとめられている項目一覧:

  • ストーリー
    • プロダクトが置かれているポジション(インセプションデッキのような扱い)
    • 顧客への約束ごとを一言で
    • ブランドを擬人化した時のパーソナリティ
    • ペルソナ
    • ストーリーボード(ソリューションがユーザーの目標をどのように助けるか)
  • シンボル
    • タイポグラフィ
    • カラーパレット
    • ロゴ
    • 使用する画像
  • 戦略
    • 認知度向上のための施策(チャネルやコンテンツなど)
    • 収益につなげるための施策
    • マイルストーン(メッセージを発信するタイミングなど)
    • 継続的なコミュニケーション手段(シェアの促進など)

テンプレートのダウンロード:

The Brand Canvas – How To Create and Communicate A Compelling Brand – Ignition Framework

Why does Apple’s brand mean so much to so many people? How is it that they seem to sell their products almost effortlessly while other manufacturers are constantly clamoring for our attention and we give them no heed? When it comes to innovation, invention is only half of the equation.

3. Team Canvas

チームワークはプロダクトの成功を左右します。

全社のミッションやプロダクトの戦略を共有することはチームのコミュニケーションを円滑に進めるために、最低限必要であることは誰もが認識していることだと思いますが、実は普段会話しない内容がチームワークを良くする上で大事だったりするのではないでしょうか。これは僕の経験なのですが、個人には強みや弱みがあり、やりたいこととやりたくないことがあり、それを理解せずに進めてしまうと本当のチームとして機能(ワーク)しないことがあります。僕自身もやりたくないことがあるので、それは周囲に明示するようにしています。

Team Canvas

Copyright © 2015 The Team Canvas

そこで目に止まったのが「Team Canvas」です。これはワークショップ形式で、約1時間ほどかけてチーム全体でまとめると効果的だそうです。結構踏み込んだ会話が求められるので、アイスブレイクも兼ねて進めるといいかもしれません。

キャンバスにまとめられている項目一覧:

  • チームメンバーと役割
  • チーム共通のゴールと個人としてのゴール
  • 目標を達成するために活かせる強みやソフトスキル
  • チームと個人の弱みと直面しうる課題
  • チームとしての行動規範
  • 個々のニーズやチームへの期待
  • チームが大切にすべき価値
  • 目的(なぜしているのか、何をしようとしているのか)

テンプレートのダウンロード:

Learn about Team Canvas – Team Canvas

Years of observing, leading and consulting small teams made us realize that it’s not the lack of knowledge that makes effective teamwork so hard. It’s the hard questions themselves that are not being asked at the right time.

4. Project Canvas

「Project Canvas」は、プロジェクト全体におけるコミュニケーションをシンプルに、そして明確にするためのキャンバスです。プロジェクトのキックオフや、プロジェクト途中のチェックイン、そして振り返りの際に利用することを想定されています。インセプション・デッキと重複する要素はあるものの、正式文書ではなくビジュアル化することで、相互理解を促すことができるのでいいなと思いました。

Project Canvas

Copyright © 2016 Project Canvas Creators

これも自身の経験ですが、過去のプロジェクトではこのキャンバスと似たような項目をワークショップを通じて外部化したものをプリントして、壁に貼り付けたりしました。データとして格納するよりも、目に見えるところにあるとプロジェクト中に迷子になりづらいので、おすすめです。また、希かもしれまぜんが、複数のプロジェクトにアサインされている状態の場合、より効果が発揮されるかもしれません。

キャンバスにまとめられている項目一覧:

  • プロジェクトの目的
  • プロジェクトのスコープ
  • 成功指標(プロジェクトの成功を定めるための指標)
  • 主要なマイルストーン
  • 主なタスク(やるべきこと、方針など)
  • アウトカム(最終的に成し遂げられるもの、成果)
  • チームメンバー
  • ステークホルダー
  • ユーザー
  • リソース(予算など)
  • 制約事項(外的要因による弊害など)
  • リスク

テンプレートのダウンロード:

Project Canvas – Visual project communication and overview

Project Canvas is made by project facilitators and project management professionals, who seek to simplify the challenge of project communication – before, in and after project execution: project kickstart: pitching and project initiation. project overview: project briefing and status. project management: task assignment and project progress.


5. Workshop Preparation Canvas

過去にワークショップを企画並びに実施した経験はありますか?

その時その時の関係者を巻き込みながら、プロジェクトを効率的に進める上で様々なワークショップを開くことがあります。ワークショップの落とし穴は、ただ楽しいで終わってしまわないことです。楽しいのはいいことなのですが、目標が達成できたかどうかがワークショップの成功を判断する上で重要となります。このキャンバスでは、ワークショップを成功させる上で必要な「6つのP」をまとめてくれています。

Workshop Preparation Canvas

Copyright © 2018 Toby Sinclair

ロジスティックな部分など、基本中の基本についての明記を促していますが、疎かにしてしまうことがたまにあるので埋めておいて損はなさそうです。

キャンバスにまとめられている項目一覧:

  • Purpose(目的、なぜやるのか?)
  • Practicalities(いつ、どこでやるのか?どのようなセットアップでやるか?)
  • Participants(参加者はだれか?各人のニーズは何か?)
  • Products(事前に準備すべきものは何か?題材は何か?)
  • Process(アジェンダは何か?)
  • Principles(どのように意思決定が行われるか?ワークショップの価値は?)

テンプレートのダウンロード:

Workshop Preparation Canvas

“Give me six hours to chop down a tree and I will spend the first four sharpening the axe.” ― Abraham Lincoln I have run many workshops and by far the most important part to a successful workshop is the preparation. From my experience a one day workshop requires at least three days preparation and maybe…

番外編:ユニークなキャンバス2選

以上、キャンバス・コレクターの僕がオススメする5つのキャンバスでした。本当はもっと紹介したいのですが、たださえ長い記事なのに、更に長くなってしまうので最後に2つだけ、番外編としてとてもユニークなキャンバスをご紹介します。もはやプロダクトやサービス開発に関係がないかもしれませんが、悪しからず。

Negotiation Canvas(ネゴシエーション・キャンバス)

誰かとネゴシエーション(交渉)するときに、自身の考え方を整理するのをサポートしてくれるキャンバスです。みんながハッピーになり得るアイディアを複数考え、上手くいかなった時の対処法まで考えるというバックアップ付き。

Check out Negotiation Canvas, a free workshop template!

One-page tool for success in any negotiation.

Life Canvas(ライフ・キャンバス)

その名の通り、人生について考えることができるキャンバスです。自身のビジョンやスキルが世界のニーズとマッチしているかどうかを測るために活用することができますが、今話題の Ikigai についても触れられているので個人ワークでやってみる価値はありそうです。

The Life Canvas

The Life Canvas is a framework that provides a simple, visual method of defining, understanding, and utilizing your unique capabilities and desires to build the future of your dreams.

まとめ

こうやって一つ一つのキャンバスに目を通してみると、キャンバスというフレームワークはとても奥が深いです。

今回のように、高度な思考技術によって整理された構造をリバースモデリングすることで、意図が汲み取りやすくなり自分自身の頭の整理にも役立ちます。また、いざ埋めようとしても、埋められない項目があったりします。つまりそれは、情報が欠落しているということです。欠落しているということは、失敗する可能性があるということです。キャンバスのいいところは、一枚絵にすることで、欠落した情報を見逃すことができないところだと思います。

一つでもいいので、試しにやってみませんか?

もし、微妙だな〜と感じられた方がいれば、実用性が比較的高い以下のキャンバスから始めてもいいかもしれません。実際にやってみましたが、難易度は高めです。

はじめに

仮説検証学習サイクルを可視化するためのツールを「Experiment Board」と呼んでいます。2年ほど試行錯誤を重ねましたが、今は納得して運用することができているので、世のプロダクト開発をよりよくするためにも、参考になるかわかりませんが公開したいと思います。

なぜ、この Experiment Board が必要だと思ったのかと言うと、過去にこんな悩みがあったことがきっかけでした:

  • ユーザーリサーチの際に、過去の質問や検証内容と重複してしまうことがあって、時間の無駄だと思った
  • どこまでが未検証で、どこまでが検証済みだったかわからず、迷走することがあった
  • 価値ある学びやインサイトが多くあった場合に、まとめて管理したり記録する方法がわからなかった
  • 仮説検証学習のために実験を繰り返す習慣を身につけたかった

これらのモヤモヤを解消してくれたのが、Experiment Board でした。根底にあるのは、リーンスタートアップの「Build-Measure-Learn」のフィードバックループです。

Learn:思い込みや仮説、Build:実験、Measure:検証可能な指標

この図の通り、実験(Experiment)を通しての仮説検証の結果から得られる学びを切り取り、形式化することが鍵となります。

なぜ、実験なのか?

上記で「実験」という言葉を使いました。科学のように、仮説を検証するために積み重ねる実験は、正にプロダクト開発においても同じだなと思います。なので、仮説検証学習サイクル=実験と呼んでいます。

なぜ実験が必要かというと、プロダクトを開発する上で最も高いリスク、それはユーザーに使われないものを作ってしまうリスクを可能な限りなくすためです。リスクを低減するためには、早期に「いま」検討中ないしは開発中のプロダクトを試すことが重要であり、同時にその行程を管理し、修正していくことです。

あと、「リリースをする」という表現よりも「実験をする」と言い換えたほうが目的が明確で、意思決定のスピードや検証サイクルも早くなる気がします。心理的構えもなくなるので、安定します。

なにを、検証するのか?

左が課題の優先順位付を行う「2×2」、右が Experiment Board です

実験をはじめる前に、答えるべき問いを設定します。この問いに対する解を得るために、実験をします。問いは多きく分けて2つのカテゴリに分類することができます。

  1. ユーザー&課題
  2. プロダクト&ソリューション

(1)については、

  • 実際にユーザーは存在するか?
  • 解決「すべき」課題か?

などが代表例です。これらの問いに対する解を見出すことができれば(2)に進みます。

  • ソリューションは課題を解決するか?
  • 使いやすいか?

などが代表例です。これらの問いを検証可能な仮説に落とし込んで実験することで、以降はより詳細な仮説検証学習サイクルに進むことができます。仮説の設定方法については過去のエントリーが参考になると思います。

仮説駆動型UXデザインのススメ | mariosakata.com

先月末に NIJIBOX 主催のイベント …

どのような、流れで行うか?

プロダクト開発手法に左右すると思いますが、私が慣れ親しんでいるアジャイル開発では、イテレーションごとに以下の流れで実験を行っています。

イテレーションごとの流れ:

  1. 問いの設定
    ユーザー&課題について?プロダクト&ソリューションについて?
  2. アサンプションを洗い出す
    最もリスクが高い思い込みは何か?
  3. 仮説化する
    検証可能な仮説にする
  4. 実験方法を考える
    何を検証するためにやるのか?どのようにやるのか?
    例)ペーパープロトタイプ、ABテスト、ランディングページ、インタビューなど
  5. 実験する、試してみる
    どれくらいの期間やるのか?何人に対してやるのか?
  6. 結果を測る
    仮説は検証できたか、間違っていたか?
  7. 振り返って学びをシンセサイズ(統合)する
    何を学んだか?
  8. 繰り返す

実験は繰り返すものです。次に何を検証しようと悩んだ時には、以前ご紹介した「2×2」というフレームワークを取り入れてみるといいかもしれません。

2軸で考えるプロダクトデザインの シンプルな意思決定方法

9月上旬に、 UX MILK 主催の「 UX MILK Fest 2019」という大きなイベントに登壇させていただく機会がありました。「2軸で考えるプロダクトデザインのシンプルな意思決定方法」と題した当日のセッションでは 「2x2」という手法をご紹介しました。セッションでお伝えしたかったのは、この手法を取り入れることで、様々な角度から軸となる考え方を UX …

Experiment Board の例

先ずは準備です。実験を進めるための必要項目を記載していきます:

  • フェーズ(実験の回数やプロダクトのライフサイクルなど)
  • ペルソナ
  • 期待する成果(アウトカム)
  • 検証したい仮説
  • 実験方法
  • 成果指標(Key Result)
  • 学び

Google が主催したイベントに登壇した際にも紹介した、Experiment Board の事例です。ちなみにこれは、実際に Zappos が実践した実験そのものです。多少編集しています。

  • フェーズ:Beta
  • ペルソナ:レイシーさん
  • 期待する成果:ユーザーはいつでもどこでも靴を買うことが出来る
  • 検証したい仮説:ユーザーはオンラインで靴を買いたいだろう
  • 実験方法:オズの魔法使い
  • 成果指標(Key Result):50%のユーザーは一足以上の靴を買う
  • 学び:女性はドレスにあう靴をオンラインで購入する傾向にある

仮説があっていたかどうか、また指標が達成できたかどうかをステッカーを使って管理してたりします。赤はアラートなので、やり直す必要があるのか、そもそも辞めるか、といった決断をする材料となります。

Experiment Board の導入によって、いつ、誰に対して、何のために、そしてどのような実験をするのか?そして、その結果はどうだったか?この一連の問いをこの順番で可視化することで、論理的に物事を考えることができ、情報の整理が容易になりました。

仮説検証学習サイクルも回り続けます。

上記が一応テンプレートのような役割を果たしていますが、ホワイトボードに縦に貼り付け、その横に実験ごとの結果を記録していくだけでも済みます。実験の回数が多くなってきたら、エクセルでもいいので、デジタルに移行することをオススメします!

まとめ:やってみてよかったこと

インサイトや学びの抽出がしやすくなった

可視化のメリットはやはり大きいです。特に、今回ご紹介したようにホワイトボードなどを用いることができれば、何が検証できて、何が間違っていたのか、どのような学びがあったのかを項目ごとにすぐに確認することができるので、取りこぼしが減ったように思います。

次のアクションに繋げやすくなった

学びはチームを前進させてくれます。普段であれば、見ていないところや諦めているところをすくい上げて、新しい価値を見出すこともできます。他にも、ターゲットユーザーのアップデートであったり、課題の優先度の変更といった本質的な議論が展開されるようになります。それは、中長期的に見るととても有益な情報だったりします。

過去の実験がまとまっていることで自信がつく

プロダクト開発では、生産性に直結するアウトプットに注目することが多いです。でも、Experiment Board のようにこれまで実験した回数であったり学びの数が可視化されていると、それだけ良いプロダクトに向けて突き進んでいることがわかり、一人一人の自信につながり、チームの士気も上がります。このような質的なイニシアティブが得られることも、メリットの一つです。

早い段階でいくつかの仮説や思い込みが間違っていたことがわかる

最もリスクが高い思い込みを優先して検証可能な仮説に思い込み、実験によって検証することで、それがあっていたか間違っていたかを測ることが Experiment Board の目的です。一つ一つ潰すことで、安心感が得られるのも、いいところです。

全ては、実験です。このフレームワークの導入も、実験です。導入コストは圧倒的に低いので、ぜひやってみてください!

プロダクト開発に携わっている人であれば、MVP という単語を一度は耳にしたことがあるかもしれません。これは最優秀選手を表彰するときの名称ではなく、起業家であるエリック・リース氏が彼の著書『リーンスタートアップ』で紹介したコンセプトです。彼の著書が出版されてから8年も経っていますが(いま調べて驚き)、プロダクト開発を続けていると、MVP という言葉だけが一人歩きし、誤った理解や解釈がそのままに、現在に至ってしまっているように思います。その理由は後ほど。

問題は、MVP の訳し方にあったと考えます。MVP は Minimum Viable Product の頭文字をとったもので、Wikipedia で以下のように訳されています。

実用最小限の製品(じつようさいしょうげんのせいひん、Minimum Viable Product、MVP)は、初期の顧客を満足させ、将来の製品開発に役立つ有効なフィードバックや実証を得られる機能を備えた製品のバージョンを指す。

別の言語のニュアンスを細かく汲み取って、万人が理解できるように意訳することは難易度がとても高いです。私の場合も『Lean UX』という書籍の監訳を担当させていただきましたが、どうしても「最小限」という単語が印象的なのか、組織にとって都合がいい言葉なのかわかりませんが「最小限の機能を搭載した製品」のことを指す言葉として使われることが多い印象を受けます。

このようなシーンを目の前にしたことがあります。

新規サービスを立ち上げることになりました。様々なステークホルダーの協議した結果ぎ開発したい機能リストとしてエクセルにまとめられていて、その中でも優先順位が高いものには「高」というラベルが付けられています。それも、約3分の1が「高」だったりします。最悪なケースは、機能価値が未検証のまま優先度が割り振られているときです。根拠がないとなると、更にヤバイ。この「高」に分類されているのが、MVP だと言い張る人がいます。そもそも「中」とかあると、曖昧すぎてよくわかりません。

MVP の V を「実用的な、実行可能な」として直訳することができますが、これはサービス提供者視点ではなく、ユーザー視点に立ってみると、捉え方が変わってきます。誰にとっての最小限なのでしょうか?機能的な最小限を意識しすぎてしまうと、何の価値もない出来の悪いプロダクトになってしまうことがあります。

ああ、だから新しい手法を取り入れると失敗するんだよ。

このようになってしまいます。ポイントはユーザーの立場から見た場合の実用的なプロダクトとはなにか、を考えてみることです。

実用的、という言葉が意味するところを説明するのは大変難しい。そのため、私はよくこの絵を見せて関係者の理解を得ようとしています。

 

元々は米コンサルティング会社に勤めているアジャイルコーチがブログで紹介した図から来ています。この人は MVP を正しく理解するために Viable を Usable / Loveable と置き換えていることが素敵です。

このユーザーは、いまいる地点から目的地まで移動するまでにかなりの時間がかかってしまっています。不便ですね。MVP を最小限の機能と認識し、機能単位でプロダクト開発を進めていくと、最小限の線引きが時間の経過とともにわからなくなり、実用性を高めるためにはつくりきるしかなかったりします。それが上段です。

一方で、下の段のスケートボードはユーザーが抱える問題への最初のアプローチとして、ユーザーがそのプロダクトに価値を見出してくれているかどうか、日常生活において実用的かという観点で検証をすることができます。まだまだ満足ではないかもしれませんが、ユーザーが価値を見出せて課題の解決に至りそうなのであれば、移動時間を短縮するための次のアイディアにステップアップすることができます。

MVP には目的があります。リーンスタートアップという開発手法の一部なのだから、一人歩きは危険です。最小限の機能は作れた。MVP は完成だ。これで一区切り、なんて終わり方はしてはいけません。もしそうなっていたら、誰にとっての最小限であって、誰が喜ぶ MVP なのか、を再確認したほうがいいかもしれません。

Tips: 機能リストがもし手前にあるのであれば、そのリストを半分に減らしてみてください。そして、更に半分にしてみてください。そこから始めてみましょう。