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はじめに

人の行動が変わる三つの要素というのを昔聞いたことがあります。

周囲にいる人、置かれている環境、金銭的な裕福さだったと思います。どれか一つでも変わると、人の行動には変化が見られるようになります。身近な例だと引越しや転職、宝くじの当選や昇給などが挙げられます。なぜ、この話を始めたのかというと、UX デザインやアジャイル開発の組織内導入に伴う課題の一つに、組織文化の醸成を最も多く耳にするからです。では、組織の文化を変えていくためには何が必要だろうと考えを巡らした結果、この三つの要素に行き着きました。そして、それはあながち間違いではないと思います。

「イノベーションを生むには、まずオープンでコラボレーションが自然と生まれるような環境が必要だ!」と叫ばれているのはわからなくもないです。しかし、それだけでは人は中々変わらないことを自分自身も経験してきました。オシャレであることはいいことです。でも、自己満足かどうかはすぐにわかったりします。組織または組織文化を変えるには、他の二つの要素も射程に入れなければ意味がありません。

ではどうす流べきでしょうか?

Culture Mapping というアプローチ

他社事例を元に直ぐに対策を練るのではなく、現状を知ることから先ずは始めなければなリマ線。文化とは何か?という哲学的な問いに明確な答えなどない気がしますが、少なくとも整理することはできます。ここで私が注目したのは、「Culture Mapping(カルチャー・マッピング)」というアプローチです。これが最もしっくりきました。

What is Culture Mapping and why should you care?

Depending on who you ask, 60-70 percent of change initiatives fail to meet their stated objectives, and the primary source of that failure, according to a Deloitte study, is resistance to change. So if you’re embarking on a change initiative, the last things you want to skimp on are risk-awareness and risk management.

カルチャー・マッピングは、「The Connected Company」という本で紹介されており、組織内のサイロ(縦割り)からの脱却を目的とした組織文化の統合について触れられています。読み応えがあるのでぜひ手にとって読んで見てください。和訳版は「コネクト ―企業と顧客が相互接続された未来の働き方」。

簡単に要約すると、カルチャー・マッピングは著者自身の経験から生まれたもので、買収等に伴う組織文化の統合を迫られた彼はトランスフォメーションの一環として目指すべき素子文化のマッピング作業から始めました。全ての会議室の壁にこれを張り出し、従業員の評価基準にも採用するなど徹底させた結果、文字通り、求める通りに組織の文化をデザインすることができたと述べられています。それが体系化されたツールが、このカルチャーマップ(PDF)というわけです。

上は、カルチャー・マップは各ステークホルダーの役割や体制を軸として項目ごとの関係図を可視化したもの。

Culture Map で定められている項目

定められている項目は以下の通り。

Evidence(証拠):従業員はどのような行動をしているか?

  • どのように業務に取り組んでいるか
  • どのような言語で会話しているか
  • どのように協業し、創造活動が行われているか
  • どのような空間、環境で行われているか

Levers(手段):行動を規程するルール(公式/非公式)にはどのようなものか?

  • 何がどのようにコントロールされているか
  • どのように意思決定をしているか
  • どのように人的資源を配分しているか
  • どのように賞賛しているか
  • 意図的なルールや環境はどのように定めているか

Values(価値):企業が提供する価値はどのようなものか?

定義している価値

  • みんなが口を揃えて言う、定義されている価値はなにか
  • 公式な文書やステートメントとしてどのようにまとめられているか

実践している価値

  • 上記の証拠や手段によって影響を受ける因子はなにか
  • 個々の実践によってどのような価値を提供しているか

Assumptions(仮説):想定されている仮説はどのようなものか?

  • 上記に記載の価値はなぜ、我々に成功をもたらしてくれるのか
  • 同じく、市場での有利性をどのように担保してくれるのか

チェックリストのように位置付けると、これらの項目は非常に合理的だと思います。冒頭でも記述した、周囲にいる人、置かれている環境、金銭的な裕福さが含まれていることがわかります。よって、カルチャーマップに定められている項目は、ここに挙げた脅威のディテールや事実を定義するものとして活用できる、効果が期待できるツールなのではないでしょうか。

余談ですが、過去に自身で企画をして、案件をプロジェクト化したことがありました。他とは独立した文化を持つチームを編成して進めていたことがあります。個人的にはチームとプロダクトが共にサクセスだったと自負しているのですが、工夫した点を上記項目に当てはめた場合、こんな感じでした:

  • 必要予算の打診と確保(ROI算出)
  • プロセスと利用ツールの整備
  • チームへの権限委託(チームのみで意思決定可能な範囲の確認)
  • チームとしての共通稼働時間の整理
  • 提供価値の言語化と更新
  • マーケットからの継続的なフィードバック方法の確立(ユーザーインタビューを定例で設けるなど)

新規であったため、これが時の流れと共にどのように文化が醸成されて変異していったのかはモニタリングしなければわかリませんでした。必要であれば、文化を変えることも可能であったと思います。とはいえ、このようなツールがある、ないとでは差が出てくると思われます。

まとめ

文化は魚に例えると水のような存在であり、文化をデザインするということは、水を取り替え、一つの群れでどのように一緒に泳いでいくべきかを考えることです。群れの中でどのように協業し、どのようにリスク回避すべきかを考えることです。スタートアップなど新しい水槽(組織)を構築するフェーズにおいては比較的より組みやすい環境かもしれませんが、組織規模が比較的大きい水族館のような組織では記述した脅威によって滞りがちです。変化が求められているのであれば、先ずは文化のダイナミクスについて理解を示すべきだと思います。そのためには、このようなツールを上手く利用して、可視化から始めるといいかもしれません。

“The stronger the culture, the less corporate process a company needs. When the culture is strong, you can trust everyone to do the right thing. People can be independent and autonomous. They can be entrepreneurial.” – Don’t Fuck Up the Culture

文化が組織に深く根付いていればいるほど、組織はプロセス依存ではなくなります。根が深ければ深いほど社内の信頼は構築されていき、自主的かつ独立した取り組みが個人レベルによって行われるようになります。