はじめに

9月上旬に、 UX MILK 主催の「UX MILK Fest 2019」という大きなイベントに登壇させていただく機会がありました。「2軸で考えるプロダクトデザインのシンプルな意思決定方法」と題した当日のセッションでは「2x2」という手法をご紹介しました。セッションでお伝えしたかったのは、この手法を取り入れることで、様々な角度から軸となる考え方を UX デザイナー含めチーム全員が持つことができ、優先順位を徹底してプロダクト開発に関わるすべての意思決定をすることができるということです。

結果として、ステークホルダーや他のメンバーになぜ、その決定に至ったのかがロジカルに説明しやすくなり、説得力が生まれ合意形成がこれまで以上に効率化されます。この記事では、当日のセッションの様子を振り返ります。導入のハードルは低いと思いますので、当日参加できなかった人にとっても、お役に立てれば幸いです。(プレゼンテーションのスライドはspeakerdeckでもご覧いただけます)

なぜ 2×2 か?

このテーマを取り上げたいと思った背景には、以下の課題を多く耳にすることがあったからです。

開発したいデザインアイディアやソリューションが多すぎて、どこから着手していいかわからず、UX デザインが組織に浸透しづらい…。

2x2は、まずはじめに何を着手すべきかをチームで意思決定をする手助けをしてくれる手法です。 この2x2という手法を用いることで、UX デザイナーのみならずチーム全員が意思決定に関わることができ、ユーザー視点を維持することができるようになることで、上記の課題を解決してくれます。

2×2 の特徴

2x2は四象限のマトリクス構成になっています。意思決定をする際に必要となる観点を2軸(縦と横の軸)に設定することで、対象となる要素をセグメントごとにマッピングし、まずやるべきことをロジカルに決めることができます。これは、優先度を決めるときに効果を発揮します。

2つの軸で意思決定の対象となる要素を相対的にマッピングするとこのようになります。この絵では、4つの各セグメントごとの意味を説明しています。当然ながら、右上にあるセグメントはそれぞれの軸にとって優先度が高い要素が集まっているので、やらない理由はありません。逆に言えば、左下にあるセグメントは優先度が低いため、前述したデザインアイディアやソリューションはやらない方がいいという判断ができるようになります

ケーススタディ:ユーザーリサーチからアイディエーションへ

実際のプロジェクトでは、ユーザーリサーチの結果からアイディアを創出するために以下の2軸を設けて整理することができます。

ユーザーリサーチの結果であるインサイト(課題)をカードに書き出し、それぞれのセグメントにマッピングしていきます。尚、このときはチーム全員が参加することを推奨しています。なぜなら、マッピングには様々な角度から物事を捉え、優先順位を決める必要があるからです。

次に、解決すべき優先度が最も高いユーザー課題を対象に、アイディエーションのステージへと移っていきます。弊社ではデザインスタジオと呼んでいますが、プロダクト開発に関わるチームメンバー全員が参加し、ユーザー課題を解決するためのアイディアを発散する時間を設けます。

今度は以下を軸として、開発するソリューションを決めて次に進みます。

  • 縦の軸:ビジネス・インパクト(または価値)が高い / 高くはない
  • 横の軸:実現性が高い / 高くはない

2x2を用いることで、優先順位が高いユーザー課題とそれを解決するための最善のリューションが決定しました。今回はプロジェクトの2つの状況下における優先度づけと意思決定の一例をご紹介しましたが、軸は臨機応変に変えることができるため、プロジェクトのどのフェーズにも適応可能です。例)リスクが高い / 高くはない、確度が高い / 高くはない

2x2をより効率的に進めるためのアドバイス

  1. 右上に偏らないようにする
    よくあるケースは、すべてが大事と思っているが故にポストイットのほとんどが右上 偏ってしまうことです。2x2はあくまでも相対的なので、各セグメントに同じ数のポストイットを貼るように意識するとうまくいきます。
  2. 高い・低いといった二極化した表現を多用しない
    例えば、低い/少ないと言い切ってしまうと、そのセグメントにポストイットを貼るときに 戸惑ってしまいます。ステークホルダーによっては反発をくらいます。高くない/多くないといった 表現を用いることで、対立緩和を促すことができ、効率がよくなります。
  3. ポストイットを重ねない
    ポストイットを1枚1枚ボードに貼っていく際に、同じ優先度だからといってお互いを重ねないこと。必ず、ポストイットの上か下か、左か右に貼るようにして優先度の設定を徹底しましょう。
  4. まずは縦軸で整理し、そこから横軸で整理する
    いきなりそれぞれのセグメントにポストイットを貼っていくのは難しい作業です。 まず、縦軸に従って上から下まで一列で優先度を決めることをオススメします。そのあとに、 横軸に従って左右に貼っていくとスムーズにいきます。

2×2 を経由して仮説検証サイクルが回り始めたら、「Experiment Board」と言うツールを組み合わせて同じく可視化していくと、チームの共通理解が得られていいかもしれません。

アジャイル開発の仮説検証学習サイクルを可視化する「Experiment Board」 | mariosakata.com

アジャイル開発における仮説検証学習サイクルを可視化するためのツールを 「Experiment Board」 と呼んでいます。2年ほど試行錯誤を重ねましたが、今は納得して運用することができているので、世のプロダクト開発をよりよくするためにも、参考になるかわかりませんが公開したいと思います。 なぜ、この Experiment Board …

まとめ:2x2を取り入れることによって得られた成果

積み上がったデザインアイディアやソリューションを計画的かつ論理的にアプローチする方法がなければ、半ば強引に社内政治や声が大きい人の判断で決まってしまって、結果ユーザー視点が抜け落ちてしまったりすることがあります。それでは、デザイナーの価値が十分に発揮されなくなってしまい、ユーザー視点を取り込むことは難しくなるでしょう。

  1. この手法を取り入れることで、対立する様々な軸とバランスを取りながら優先度を設定することができるため、なぜ、その決定に至ったのかがロジカルに説明しやすいため、プロダクト開発に関わる全ての人の理解が得やすくなりました。
  2. 「この機能を追加して」といった急な相談や依頼が来ても、2x2を組み直したり、他の要素と相対的に比較して着手する順番を改めて決めることができるため、優先度の取り引きが可能になりました。結果として、チームも柔軟に対応できるようになったと感じます。

前述したように、導入のハードルは低いと思いますので、ぜひ身近なものから少しづつ挑戦してみてください。無駄のないユーザーのためのプロダクトを開発するために、常に優先順位を徹底してみましょう!

 

 

約2年ぶりの、久々の投稿です。これよりも前の記事は、旧ブログ「UXploration」にあります。この空白期間、自分は Pivotal Labs Tokyo というアジャイル開発コンサルティング会社でプロダクトマネージャーとして仕事をしています。今も変わらずにプロダクトマネージャーとして楽しい1日を送っています。

よく活動を休止していたバンドが充電期間を得て復活!というニュースを耳にしますが、この記事をいま書くにあたって同じような心境にいる気がします。言い過ぎかもしれません。この2年間はもちろんのこと、社会人になってから10年以上のキャリアを振り返ってみて、スティーブ・ジョブス氏が口にした、Connecting the Dots を実践してみようと思ったことがきっかけで、いまこの記事を書いています。

社会に出てから今日までの過程で、自分が辿り着いたひとつの結論は、UX デザイナーからプロダクトマネージャーへのキャリアパスは、ありと言うこと。この先は、デザイナーのキャリアパスの先にあるものはなにか、という問いに対するひとつのアイディアになればいいな、と思っています。

これまで歩んできたキャリア

ざっくりまとめると、こんな感じです:

  1. UIデザイン:バナーや特集ページなどをデザイン
  2. IA(インフォメーション・アーキテクト):特集ページやウェブサイトの画面設計
  3. UX デザイン:ウェブサイト全体のリニューアルとプロジェクトマネジメント
  4. 経営企画:新規事業の立ち上げ
  5. UX 戦略:ユーザー視点におけるサービスの中長期戦略設計

詳細は自己紹介ページに掲載しています。

About Me | mariosakata.com

Hello. I’m Mario Sakata, Product Manager and UX Designer who enjoys working as much as playing. 東京在住のプロダクトマネージャー兼UXデザイナー、坂田 一倫(さかた かずみち)の自己紹介ページです。

いま振り返ってみるとプロダクトやサービス開発の上流へと上流への登って行っている気がします。

  • ウェブサイトのレイアウトや構造を設計していると「誰のために」つくるべきか?という問いにもっと関わって行きたいと考えるようになり、
  • UX デザインを基軸としたリニューアルを担当していたときは「なぜ」つくるべきか?という問いにもっと関わって行きたいと考えるようになり、
  • 新規事業をゼロから立ち上げた際は「正しいもの」とはなにか?という問いに関わって行きたいと考えるようになり、

ウェブサービスの中長期戦略を設計していたときは「どのように」つくるべきか?つくり続けていくべきか?という問いに関わって行きたいと考えるようになった。これは考えるときの癖なのですが、この頃から WHAT? FOR WHOM? WHY? HOW? と自分自身に問うようになり、この問いへの最適解を追求し続けたいという想いがあって、いまに至ります。

キャリアチェンジの火付けとなった(苦い)思い出

今日、サービスデザインの普及によってビジネスとデザインが少しづつ融合し始めているように思います。そのハーモニーは、自分は当時から特に意識していたこともあって、いまとなってはとてもワクワクしています。しかし、ここにくるまではデザイナーとしてのキャリアが最も長かったこともあり、ユーザー視点の重要性を強く主張しすぎるあまりに、「ビジネス」とよく対立することがありました。

そして、キャリアのスタートは、組織体系として事業を横断してプロジェクトにコミットしていく、いわゆるコストセンターとして機能する横串組織に属していたため、制約がある中で自身の価値を発揮することができていないと、自分を攻めたときもありました。

  • ユーザーリサーチを実施するための時間とコストは確保できているのか?
  • この機能は本当にユーザーのためになるのだろうか?
  • リリースした後のユーザーの反応はちゃんと見ているのだろうか?

このような問いが常に頭をよぎり、敵対的、反抗的、と言われてもおかしくないコミュニケーションが続いていました。多分、多くの人に「あいつ、面倒くさいやつだな」と裏で言われていたんだと思います。ところが、いま思い返すと、自分自身がコミュニケーション先の相手のことを理解しようとしていなかったことに後になって気づきました。

そこで自分は閃きました。自らが事業側にキャリアチェンジをしてプロダクトやサービス開発に関わっていけば、その理由がわかるかもしれない。それがきっかけとなって、プロダクトマネージャーという仕事に出会ったのです。

プロダクトマネージャーとしての脳トレ

改めて、自分は今、UX デザイナーからプロダクトマネージャーにキャリア転換すきっかけとなった、サンフランシスコに本社を置く Pivotal Labs Tokyo と言う会社に勤めています。詳しい内容は Pivotal Labs Tokyo のブログ「Product Run」を覗いてみてください。

自分がこれまで出会うことがなかった、Pivotal Labs が推奨している Lean XP というソフトウェア開発のメソドロジーは、自分がこれまで抱いていた課題感を払拭してくれた。特徴としては以下のようなものがあります:

  • ビジネスとユーザー双方の視点から解決すべき課題の優先度をつける
  • 解決すべき課題は、ユーザーの観点から特定する
  • 優先度はビジネスバリューが高い・低いに加えて ユーザーバリューが高い・低いで考える
  • 優先度が高く、かつ自信があるものから開発を着手する
  • 開発を小さく進めてリスクを最小限に抑える
  • ユーザーからのフィードバックをもとに続けるか/見直すか/止めるかを判断する

Pivotal Labs のプロダクトマネージャーはざっくり説明すると、ビジネスに責任を持つ人で、ビジネス上の課題を解決するためのプロダクトとはなにか、というマインドを常に保つ必要があります。このマインドへのシフトは現在も進行形だが、最初の1年よりも大分慣れてきました。「デザイナー歴が長いのに、いきなりキャリアチェンジをして苦しくない?」これはよく聞かれる質問ですが、もちろん、一人でなんとかなるような仕事ではありません。周囲の助けがあって、支えられてきている。でも、いいものを作りたいという一心でキャリアを歩んできた結果、ここにいるのだから、全然苦ではないです。

終わりに

Pivotal Labs のプロダクトマネージャーとして働き初めて約2年、過去に自分が直面していたビジネスニーズとユーザーニーズの対立によって生まれる摩擦を最小限に抑えるためにはどうすればいいか。その答えがぼんやりと見えてきた気がします。どちらが有利という会話ではなく、可能な限り、双方にとっての Win-Win な状態をつくりだすにはどうすればいいか、というコミュニケーションが中心となっていること肌で感じることができています。

視点は違えど、ユーザーの課題を解決しなければサービスは成功しない、という共通認識は保ちつつ、全部まとめてはできないというサービス開発の前提に立つことが最も大事で、「ならばどれから着手していこうか」というその場で発生する会話は対立ではなく、協議に等しくなっていくべきです。ユーザーにとって価値のあるプロダクトやサービスの開発と運営に関わっている人であれば、誰もが望むこと。ユーザーに一番近しい立場にいるデザイナーのキャリアパスの選択肢として、プロダクトマネージャーは全然ありだと断言できます。むしろ、仲間が欲しい。興味があれば、飲みにでも行きましょう。キャリアの原点に立ち戻れる場で。