はじめに:Xデザイン学校とは?

Xデザイン学校とは、UX、UCD、デザイン思考、サービスデザインなどを軸としたデザインの学びと研究を推進する社会人向けのデザイン学校です。今年で4年目に突入しています。詳しくは「Xデザイン学校2020年コースカタログ(pdf)」を見ていただきたいのですが、Xデザイン学校ではスキルや目的に応じて計6つのコースに分けられています。

  1. ベーシックコース:UXデザインの基礎を学ぶ(申込受付終了)
  2. マスターコース:実践的なUXデザインを身につける(申込受付終了)
  3. アドバンスコース:プロフェショナルスキルや研究スキルを探求する(申込受付終了)
  4. ビギナーコース:初めてUXデザインを学ぶ
  5. リーダーコース:UXデザインのリーダーを目指す
  6. パーソナルコース:個人や3人程度のグループで学ぶ

その中でも (5) のリーダーコースは昨年新設されたばかりの、出来立てホヤホヤのコースです。私は昨年度に続き、本年度のリーダーコースの講師を僭越ながら務めさせていただくことになりました。お声がけいただいた山崎先生に感謝です。

リーダーコースの募集は既に開始しており、7月25日が締め切りとなっています。本年度は COVIDー19 の影響で、全てオンラインでの実施になります。

Xデザイン学校2020年リーダーコース(オンライン)募集

Description ■リーダーコースの紹介UX/サービスデザイン、デザイン思考の活用、リーダーシップ、チームワーク、ファシリテーション、ワークショップ、デザインマネジメント、組織のデザイン、ビジョンデザイン、アート思考、などを学びます。月に2回、平日の夜に講義・ワークショップで、講師と受講者の対話を通じて学びを深めて行きます。講座修了後は、X …

この記事では、Xデザイン学校、特にリーダーコースを受講しようか悩んでいるけど、もう少しイメージを掴みたいと思っている方向けに、非常にざっくりではありますが、私のセッションの様子を掻い摘んでご紹介しますので、ぜひ検討材料としてお使いください!

なぜ、リーダーコースが必要なのか?

発端は、私とコンセントの大崎さん、そしてXデザイン学校の共同代表・山崎先生と座談会をしていたときでした。経済産業省がこの春に公開した「高度デザイン人材育成ガイドライン」にて、ビジネス現場での高度デザイン人材のイメージでも示されているように、

  • デジタルトランスフォメーションへの対応の必要性
  • ビジネス価値の優先度の変化
  • VUCA時代における社会の変化

これらのデザインを取り巻く状況の変化から、リーダーシップが今後のデザイン人材に必要であることが語られるようになってきました。

経済産業省:高度デザイン人材育成ガイドライン 概要版

自分もまだまだ未熟なのですが、みんなで学び合う実験の場として、やってみよう!となったのがリーダーコースが誕生したきっかけです。

一部セッションのご紹介

コンセントの大崎さん、富士フィルム(Open Innovation Hub館長)の小島さん、Xデザイン学校の山崎先生と試行錯誤した結果、2019年度のリーダーコースでは、私は以下のプログラムを提供させていただくことになりました。

  1. チームビルディングとフィードバック
  2. リーダーシップとファシリテーション
  3. チームワークと意思決定のプロセス

非常に好評だったため、本年度も基本は昨年のを踏襲する予定です。一部いいフィードバックをいただけたので、本年度はもうひとつのコンテンツを追加予定です!

冒頭でも言いましたが、受講しようか悩んでいるけど、もう少しイメージを掴みたいと思っている方!非常にざっくりではありますが、私のセッションの様子を掻い摘んでご紹介しますので、ぜひ検討材料としてお使いください。基本は同じチームで活動を共にしていきます。

チームビルディングとフィードバック

自社に持ち帰ってすぐに適応できる、チーム力を上げるためのアクティビティを実施しました。主にチーム内のコミュニケーションを促進させることが目的です。基本、全てのセッションは同じチームで作業をしていきます。

実施したアクティビティ例:プロジェクトのチームヘルスチェック

医者が患者を診断するかのように、変化に対応できる強いチームをつくるため、チームの「今」の健康状態を測り、調子が悪いところの原因と解決策を話し合います。

リーダーシップとファシリテーション

このセッションでは、チームを導くデザイナーとして求められる、ファシリテーションの重要性とそのテクニックをご紹介しました。

ファシリテーションと一概に言っても、具体的に何をどうするのでしょう?ある程度の型がないと、例えば「ファシリテーションをお願いしてもいい?」と言われても手こずってしまいます。

私が考えるファシリテーションの基本形は以下だと思っています。

  1. アイディアを発散する
  2. 情報を整理する
  3. 優先順位を設定する
  4. 意思決定をする

これに沿って、チームを導くことが大事なんだと思います。

チームワークと意思決定のプロセス

最終回では、チームで効率的に意思決定を繰り返しながらプロジェクトを成功させるためのアプローチをご紹介しました。事前課題として、新しいサービスまたはコンセプトを考えていただき、それに対してプロダクトやサービスを成功させるために、最もリスクのある思い込みを特定していきます。

その後、ある手法(お楽しみ)を使って優先度付けを行い、検証をするための実験を計画してもらいました。いつ、どこで、どんな実験をして、何を得たいのか。これは、プロジェクトチームでプロダクトやサービスを成功させるために必要なアプローチだと思います。

最後に

私が考える、優れたリーダーが大事にしていることは以下かな、と考えています。

  1. チームの心理的安全性を担保し、自身の考えを自由に発疹し、共有できるチームにする
  2. 公正性を大事にし、誰が主張するものであれ、最高のアイディアを求め続ける
  3. すべてを一度にできないという前提のもの、優先度を徹底して一つ一つクリアにする

これに従って、コンテンツを組みました。なかなか盛り沢山で準備が大変でしたが、セッション後に毎回のように懇親会があるのですが、その場ですぐ感想を聞けたり、以前やってワークショップをやってみました!と言ったフィードバックをいただけるのは本当に嬉しく、自分自身にもプラスになっています。

大崎さんや小島さんのセッションも拝聴させていただきましたが、どれもクオリティが高く、完成度がとても高いです。ここまでUXデザインやサービスデザインを、多角的にビジネスの側面から捉える学びの機会はあまりないと思います。

ぜひ、新しい学びを体験してみませんか?

Xデザイン学校2020年リーダーコース(オンライン)募集

Description ■リーダーコースの紹介UX/サービスデザイン、デザイン思考の活用、リーダーシップ、チームワーク、ファシリテーション、ワークショップ、デザインマネジメント、組織のデザイン、ビジョンデザイン、アート思考、などを学びます。月に2回、平日の夜に講義・ワークショップで、講師と受講者の対話を通じて学びを深めて行きます。講座修了後は、X …

背景

4年ほど前に、オライリーより出版された『デザインの伝え方』という書籍の監訳を担当させていただいたことがあります。

デザインの伝え方

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組織におけるコミュニケーション術という副題で、デザインを他者に伝える際に注意すべきギャップや、必要な心構え、そして効率的に合意形成を進めていくためのテクニックが書かれています。

なぜ、今ここで『デザインの伝え方』を取り上げるのか。私はかれこれフルリモート化により、2ヶ月弱、在宅で仕事をしています。そのため、チームはもちろん、ステークホルダーや他部署の関係者との会話は全てオンラインで完結しています。いや、完結するように工夫せざるを得ない、といった表現が正しいのかもしれません。

昨日(5月7日)にこんなツィートをしました。

フルリモートに完全移行すると、それまでのコミュニケーションに様々な変化が訪れます。例えば、相手が見えなくなる。オフィスにいる場合は、チームやステークホルダー、関係部署の人間は姿を探そうと思えば見えるのは当然のことです。しかし、オンラインでは誰が、何をしているのかが見えづらくなり不安を掻き立てます。そうなると、プロダクト開発の進め方にも影響が出てきます。その内の一つが、目に見える成果物を具体的に示さなければならなくなったことだと考えています。Before コロナは自分の成果を見える範囲で証明することができましたが、それが見えづらくなった今、自分から積極的に共有しなければならない状況にシフトしているように思います。

そのために、デザイナーはデザインをすること以上に、周囲にデザインを理解してもらうためのコミュニケーションに力を入れなければならないと考えています。

半分宣伝っぽくなってしまいますが、そこで参考になるのが『デザインの伝え方』です。

デザイン領域の特徴

専門家でもない人が専門家の仕事に意見する権限を持つーこれは現代の組織において、デザイン以外の分野ではほぼあり得ない現象です。

本書に書かれている一文です。ハッとさせられました。確かにそうかもしれません。デザイナーが手がけるインターフェースはいつの間にか組織全体の対ユーザーのインターフェースとなり、自然の成り行きとして非デザイナーとの接触機会は増えてきています。先日書いた「デザイン思考の如くー陥りやすい3つの誤解」という記事でも、創造活動としてのデザインに非デザイナーを迎え入れることができた背景について述べました。

結果として、デザインは他の分野に比べると、はるかに意見の対立しやすい分野になりました。

視覚的に目にするものであるが故に、デザインが主観的なものであると捉えられることが多く、我々の直感がデザイン上の問題をどう解決してくれているかを明確に説明できないでいます。そのため、ステークホルダーがデザイナーに注意を喚起する問題や懸念の大多数は、誤解や伝達の不備に起因しており、コミュニケーションが成立していないにも関わらず、成立したと思い込むことによって発生します。

これからのデザイナーに求められるスキルは、ステークホルダーや関係者の期待をうまく調整する能力なのです。

デザインを伝えるポイント

ステークホルダーや関係者の期待をうまく調整する能力は、素晴らしいデザインを生み出す能力よりも重要になってきます。大変ではありますが、プロダクトをデザイナーとしての視点だけではなく、ユーザーに共感するように、ステークホルダーの視点から見てみると、より良いデザイン(プロダクト)を生み出す可能性が広がってくることがわかります。

本書では、ユーザーに対する場合と同じ原理原則を紹介しており、組織におけるステークホルダーとのコミュニケーションにも適用する方法について述べています。デザインを理解してもらうためのコミュニケーションは、デザインそのものよりも重要であり、冒頭で述べた通り with コロナの今は尚更です。

ステークホルダーないしは関係者にデザインを伝える際のポイントは3つあります:

  1. このデザインはどのような問題を解決できるのか?
  2. このデザインはユーザーにどのような影響を与えるのか?
  3. このデザインが代替案よりも優れている理由は何か?

お気づきでしょうか。実はこれ、ユーザーにも同じことをデザインを通して伝えているはずなのです。

  • このデザイン(プロダクト)はあなたのこの問題を解決することができます
  • このような価値を提供することができます
  • 他のデザイン(プロダクト)よりも、こっちの方が優れている理由はこちらです

前述の通り、組織におけるステークホルダーや関係者とのコミュニケーションは、ユーザーに対する場合と同じ原理原則を当てはめていることがわかります。

悩んだら、相手の裏側を引き出す質問を準備しておくのも有効です。以下が本書で挙げられた例です。

  • どんな問題を解決しようとしているのか?
  • この方法で行なった場合、どのような利点があるのか?
  • これは、このプロジェクトの目標にどんな影響を与えるのか?

これらの質問は、ステークホルダーとのコミュニケーションにおいて実はマストだったりします。と言うのも、オンラインだとどうしても存在が薄れて声が小さくなってしまう人が出てきてしまい、気軽さも欠けてしまってフォローアップが困難だったりするからです。その場合は、ややくどいぐらいに明確にしておくとコンセンサスは取りやすいかもしれません。

偉大なデザイナーは、偉大なコミュニケーター

偉大なデザイナーは、偉大なコミュニケーターという章があります。デザイナーは、ユーザーとの接点を担う人です。そのため、多くの関係者と会話しなければいけないのは必然であり、それは理解しなければなりません。そのため、平等に意見を言ったり質問をすることに、躊躇してはならないと思います。私の経験からしても、上で紹介されているような質問を聞く権利は新卒だろうと、新しく入ってきた中途だろうと、誰でも聞く権利はあります。逆に耳を貸してもらえない組織は、おかしいと思います。

最後に、本書では、デザインの伝えるときの心構えとして、IDEAL というコンセプトを紹介しています。

  • Identify the problem:問題を特定すること
  • Describe your solution:解決策を説明すること
  • Empathize with the user:ユーザーの気持ちになること
  • Appeal to the business:組織にアピールすること
  • Lock in agreement:合意を確実に取り付けること

合意が得られれば単なる IDEA(アイディア)を持っている段階から、本当に理想的な(IDEAL)なプロダクトやサービスが生み出せる段階へ進むことができるのではないでしょうか。

非デザイナーの方へ

本書の最後の方に、デザイナーと仕事をよくする非デザイナーの方向けの言葉があります。デザイナーと仕事をするときに、ぜひ心掛けて欲しいと思います。そうすれば、今まで以上に共創できるはずです!

  • 焦点を当てるべきは「デザインの好き嫌い」ではなく「デザインの有効性」
  • 解決策の提案はせずに、理解のための質問をする(それもいくらでも)
  • 「自分もユーザー」という考え方は捨てる
  • デザイナーの説明をちゃんと聴く
  • デザイナーにも決定権を委ねる
  • 言葉使いを丁寧にし、フラットな関係を保つ
  • 裏付けとなるデータの有無を尋ねる
  • デザイナーが成果を上げるのに必要なものを漏れなく提供する

最後まで読んでいていただき、ありがとうございました。

はじめに

イノベーションに関するイベントのタイムテーブルに目を通すと、約9割くらいの確率でデザイン思考という言葉を目にするようになりました。現在半額セール中の amazon のカテゴリ別(ビジネススキル)1位も、デザイン思考関連の書籍です。(2020年5月4日時点)

なぜ、このようにデザイン思考が注目されるようになったのでしょうか。歴史を振り返ってみると、IDEO と言う企業の存在は欠かせません。IDEO は、世の中への影響や貢献度の高い企業の内の一つとして知られています。

先ず、約20年前(もうそんなに経ったのか…)に発売された書籍『発送する会社!ー世界最高のデザイン・ファームIDEOに学ぶイノベーションの技法』でその名を社会に広げ、『デザイン思考が世界を変える―イノベーションを導く新しい考え方』でデザイン思考がイノベーションを起こす起爆剤になり得るという風潮を作ったことが背景にあります。

今、改めて IDEO のサイトを見ているのですが、デザイン思考の専門サイトが開設されており、デザイン思考を学ぶための教育コンテンツが盛り沢山で驚いています。

Resources

Design thinking simultaneously considers what is desirable from a human point of view, what is technologically feasible, and what is economically viable. It also allows people who aren’t trained as designers to use creative tools to address a vast range of challenges.

私も実は、この中で紹介されている IDEO U というビジネスマン向けのオンラインコースを受講したことがあります。IDEO の中の人がメンターとしてサポートしてくれるので、心強かったです。オススメ。

さて、デザイン思考というと、下記のような図を一度は見たことがあると思います。これは、IDEO の創設者であるデビッド・ケリー氏が創設した Standford 大学の d.school が提唱する5つのステップであり、デザイン思考を説明する際に最も参照されている図と言っても過言ではありません。

このように、デザインのプロセスが公式化されたことで、結果として非デザイナーをプロセスに迎え入れることができるようになりました。この功績は、非常に大きいと思います。デザイン思考は、普遍的なプロセスとしてイノベーションを実現するための鍵となる問題発見&問題解決に適用できると今日まで考えられてきました。

ただし、実際のところ蓋を開けてみると、デザイン思考で説明される言葉と、実際にデザイナーが用いる言葉を並べてみると、そこにギャップがあることが伺えます。

例)予算、社内政治、マイルストーン、工数、組織文化など

「Design Thinking is Bullshit」という衝撃的なトークをぜひ見てください。デザイン思考に対する彼女の批判はこれからのデザイン思考を語る上では欠かせないはずです。

ここで言うギャップは、私は「デザイン思考の実践で陥りやすい誤解」と理解しています。この記事では、デザイン思考の如く取り組む際の誤解を紹介するとともに、回避策についても述べたいと思います。

デザイン思考で陥りやすい3つの誤解

誤解その壱:ユーザーの声を反映すれば、うまくいく

単純過ぎますが、ここで注意すべきは、誰の声(WHO)か、何を(WHAT)拾うか、そしてどのように(HOW)ユーザーの声を拾うのか、と言う問いに対する答えを持ち合わせているかどうかです。

一言にユーザーの声と言っても、ユーザーは大勢いるが?どうすればユーザーの声を拾えるのだろうか?そして、どのような形式を採用すれば的確なニーズを抽出できるのだろうか?この答え無くして、ユーザーの意見を反映すれば失敗はしないという保証はできないはずです。なぜなら、ユーザーリサーチで大切なのは、優先度付けだからです。それでは、それぞれの問いを詳しく見ていきます。

誰の声を拾うか(WHO):ユーザー像を明確にする際には、ターゲットとなるセグメントの中でも、特に集中したい人物像のペルソナを設定する必要があります。そうすることで、従来のセグメンテーションとは異なり、より深く、そしてより実感が湧くようになります。

ペルソナで思い出したのですが、atama+ という企業ではペルソナの擬人化を徹底するあまりに、3D 化してしまったのだとか。ここまでする必要はないと思いますが、一度オフィスに遊びに行かせていただいたときに、大変興味深い光景を見ました。打ち合わせ中の社員が、ユーザーを名前で呼びながら、会話をしていたのです。ここまで浸透していると、効果は絶大です。

AI先生『atama+』開発におけるユーザー像「ペルソナ」を公開

atama plusは、「教育に、人に、社会に、次の可能性を。」というMissionのもと、生徒が「基礎学力を最短で身につける」ことを目指してAI先生『atama+』を全国の塾・予備校に提供しています。 プロダクト開発において、Valuesとして掲げている「Wow students …

何を拾うか(WHAT):リサーチの中身のことです。ここからは、イメージがしやすいインタビューに話を絞っていきたいと思います。この記事を読んでいるみなさんは、普段のインタビューではどのようなことを聞いていますか?また、インタビューに至るまでどのような過程を得ていますか?

インタビューは、学びを得る場です。そのようにインタビューを位置付けることで、チームで次のインタビューに向けて話し合う場で、学びを最大化するための質問内容が自然と絞られていきます。発散し過ぎてしまうと、あれもこれも聞きたい内容が多すぎで、インタビュー時間が超過してしまったりします。また、急ぎすぎて試合終了後の選手インタビューのようなテンポの Q&A になってしまいがちです。ユーザーインタビューは、時間が限られている。そうならないようにするためには、優先度をつけることです。優先度付けは、インタビュー設計の時から始まっています。

どのように拾うか(HOW):ユーザーの声を抽出するための方法は様々です。そのため、どれが一番ベストな選択なのか、悩んでいる人も多いはず。そこで推奨したいのは、2軸を用いた整理です。以前、2軸を使ったプロダクトデザインにおける意思決定の方法「2×2」について紹介しましたが、今回も同様な取り組みが可能です。私が過去に取り入れた軸に以下があります:

  • コスト
  • 時間
  • 母数

この軸で整理することができれば、どの手法が今の状況におけるベストな選択肢なのか自信を持って判断することができます。ユーザーの声を可能な限り、なるべく取りこぼさないようにしたいから、と言う理由で安易に母数が多い手法を選択しても、プロダクトのためにならないこともあるため、注意が必要です。

誤解その弐: アイディアは多数決で決めたほうが、失敗するリスクは下がる

デザイン思考といえば、ポストイットが壁一面に貼られていて、その前に大勢の人が集まっているシーンを思い浮かべる人が多いと思います。

これは、参加しているメンバーのアイディアを発散し、収束させる過程の内のひとつですが、ここので注意すべきは、「お任せ民主主義状態」にならないことです。自身の書籍『サル化する世界』で内田樹氏はこう述べています。

民主主義は多数決ではなく、多様な意見に対する合意形成の上で成り立つもの。できるだけ多様な立場の人を合意形成の当事者に組み込む必要がある。

大切なのは、公正性です。それはつまり、全てのアイディアにチャンスを与えることです。誰が発言したか、誰のアイディアかで判断を任せるのではなく、アイディアが優れているかどうかで判断するための発想です。公正なプロセスとは、お互いの意見を尊重し、一人が主張するものであれば、多数が主張するものであれ、最高のアイディアを求め続けること。もう一度言いますが、この人が言ったから、とか少数の意見だから、と言う不公平な扱いをしないことです。それでは、「自分の意見が受け入れられる、または受け入れてもらえる」と言う心理的安全性の環境を作り出すことができません。

アドバイスの一つは、その場で改善案を出さないようにすることです。最初に、理解のための質問をします。アイディアの一つ一つに目を通し、全員の理解が揃っている前提を作ってください。決して価値観を押し付けない、いいところも指摘してください。その後、上でも紹介したような2軸の意思決定方法を用いることができれば理想的です。

誤解その参:プロトタイプで問題がなければ、使ってもらえる

プロトタイピングツールはここ数年で劇的な進化を遂げました。過去の記事「最低なユーザーリサーチ:リモートのリスクを減らすためのアプローチ」でも述べた通り、リモート環境下でも円滑にプロトタイプを使ってインタビューすることができる時代にいます。昔は紙芝居程度ではあったのに比べて、あたかも本番稼働しているかのようなインタラクションや画面遷移を実現できたりします。本当に凄い。

最低なユーザーリサーチ:リモートのリスクを減らすためのアプローチ | mariosakata.com

本記事は、ユーザーリサーチを批判することを目的に書いた記事ではないことをご理解ください。私自身の経験をもとに、ユーザーリサーチの可能性を広げるためのアプローチをご紹介し、リモートでユーザーリサーチを行っている、またはこれから行う人にとってお役に立てればと思っている。 …

だた、ここで注意すべきはアイディアを忠実に再現することができるが故の甘えです。プロトタイプの目的は、上で述べた「何を」が明確にならなければ、ただ単に確認のためのチェックになってしまいます。ユーザーのニーズを無視してしまいがちです。この機能はあったら使いたいと思うか?使いやすいか?このような誘導的な質問をする場を何度も目撃したことがあります。こちら側が求めている答えをユーザーから引き出す、なんとも都合がいいインタビューなのでしょう。

その場で問題がなく、期待通りの回答がユーザーが得られたなら、リリースしても問題はさほどないだろうという甘い考えは、捨てた方がいいと思います。将来のことはユーザーにだってわかりません。現時点で例え「欲しい」と言及していたとしても、実際のところはその場にいないとわからないもの。成功の確率はもしかしたら上がるかもしれないが、決して保証するものではありません。

最後にもう一つ

もう一つ誤解を招きやすいのが、デザイン思考は順を追って進めていく段階的なアプローチで、リリースしたらプロセスは終了、と考えてしまいがちなところです。しかし、ソフトウェアはずっと生き続けます。ユーザーも、使い続けます。では、作り手は手を休めていいのでしょうか?

リリースした後も、その壱で挙げたように何を学びたいか、何を検証したいのかを再度整理することで、その先につなげることができます。仮説も、よりシャープになっていきます。向かうべきプロダクトの方向性も明確になっていきます。チームの自信につながっていきます。イノベーションにグッと近づいていきます。直ぐに答えを求めてしまいがちな我々ですが、一度のサイクルでうまく行ったのなら、こんなに苦労はしないでしょう。

そういえば、この記事では「デザイン思考」と言う言葉を20回以上も使いました。くどい記事になってしまいました。最後まで読んでいただき、感謝です。

はじめに

本記事は、ユーザーリサーチを批判することを目的に書いた記事ではないことをご理解ください。私自身の経験をもとに、ユーザーリサーチの可能性を広げるためのアプローチをご紹介し、リモートでユーザーリサーチを行っている、またはこれから行う人にとってお役に立てればと思っています。

私は今、フルリモートで仕事をしています。プロダクトマネージャーとして不慣れなところが多く、何が正解かわからないまま進めている状態ではありますが、完璧な正解を求めるのではなく、今のプロダクト開発に価値を届けられるかどうかで判断すべきだと最近は考えるようになりました。

イントロ:ユーザーリサーチとは?

さて、プロジェクトをフルリモートで進めていくにあって頭を悩ませている内のひとつが、ユーザーリサーチを実施するための「環境の構築」です。簡単なイントロとして、ユーザーリサーチには様々な目的があります:

  1. ユーザーと課題発見のため
  2. 価値探究と価値評価のため
  3. 使い勝手を検証するため

それぞれの目的に合わせて、ユーザーインタビューや定量調査、ユーザビリティテスト、A/B テストなどの手法を用いるのがユーザーリサーチです。

(1)では、想定しているユーザーはマーケットに存在するかどうか、そしてそのユーザーは想定していた課題を抱えているのかどうかを探るためにあります。

(2)は(1)の結果を踏まえて、課題を解決するためのアイディアを目に見える形に落とし込み、実際に触ってもらいながらソリューションの方向性を定めるために実施します。

あとは作るだけなのですが、同時にユーザビリティの検証をしながら「使いやすい」ソフトウェアに仕上げなくてはならないため、(3)も必要です。

例えば、新規でプロダクトを開発するシチュエーションにいると仮定しましょう。その場合、フルリモートでユーザーリサーチを実施するときのハードルになり得るのは、(2)と(3)です。なぜなら、実際のモノ(プロトタイプやソフトウェア)を被験者に触ってもらいながら、観察をする必要があるからです。

ペルソナと、解決すべき課題の特定がある程度できた状態で、プロトタイプをしながら(2)に進むことにしましょう。

リモートでユーザーリサーチを行うリスク

理想的なセットアップは、被験者の隣にインタビューワー(インタビューをする人)が座り、被験者がプロトタイプを触っている様子を観察しながら質問やガイドをし、仮説が正しかったのか or 間違っていたのかを検証するためのインサイトを抽出することです。

しかしそれは、「こちら」が用意した環境、例えば端末やネットワークを利用していることが前提にあります。被験者が在宅でリモートによるユーザーインタビューを行うときによく直面する問題は、被験者が持っている端末と自宅のネットワーク環境に左右される「被験者の環境に完全に依存してしまう問題」です。ちなみに、それぞれの物理的な距離はかなり遠い場合は、「では、近くのカフェでやりませんか?」なんてプランBはそもそも通用しません。では、どのようなことが起こるか。

「フルリモートではユーザーインタビューが成り立たない説」

水曜日のダウンタウンです。はい。被験者の方々に事前にご自身の環境について伺ったところ、驚きのニュースが多数寄せられました。

PC 端末が社用のため、申請していないツールが使えない

自宅のネットワークが遅く、テレビ電話の精度が悪い

なるほど。心の中では「まじかよ」状態です。このまま行けば、説が立証されてしまいます。なぜまずいかというと、プロトタイプを開くためにツールが必要なのであれば、そもそも見ることができないからです。ましてや、同業者でない限り私たちが利用するツールを申請してインストールしているとは思えません。つまり、インタビューで利用するプロトタイプが見れない可能性が高い。

そしてもう一つ。テレビ電話の精度が悪いと、発言が途切れ途切れになってしまうことが多く、向こうもこちらもストレスになり、要約されてしまったりして、諦めてしまうことが考えられます。それでは、ユーザーインタビューの目的が達成されず、形だけのインタビューになってしまいます。

リスクよりも、チャンスを見る

それぞれのリスクを低減するために、以下のようなアプローチを取りました:

  • プロトタイプを触ってもらえないリスク:figma のオブザベーションモードを使いながら Zoom のスクリーンシェア
  • テレビ電話の精度が悪くインタビューできないリスク:昔ながらの電話をする

私は最近まで知らなかったのですが、figma  の同じプロトタイプ URL を参照している人であれば、画面をミラーリングし、カーソルの動きと画面遷移を把握することができます。その動きに合わせて、電話でインタビューをするという戦術です。これがとてもいい。

Figma feature highlight: Observation Mode

At Figma we suspect some of our small (but mighty!) power features go unnoticed. In fact, after prodding our Twitter community this week, several users were surprised to learn we have a little something called “Observation Mode.” We’re going to highlight more of these semi-secret use cases on the blog and figured Observation Mode was a good place to start.

むしろ被験者の隣に座って観察しながらインタビューするよりも、画面内の行動や心理状況を的確に把握することができます。余談ですが、この仕掛けについて知っている被験者は数少ない。そのため、「え、私がやっていることがわかるんですか!?どうして?」と不思議がられることが多く、ちょっと自慢げになっています。

電話は言わずもがな。リモートの場合、これはマイナスではなくプラスに働くことが実は多いです。なぜなら、テレビ電話は正面を向いて話しているため、被験者は躊躇してしまって実は話にくかったりします。顔見知りだったら別ですが。電話の場合は普段から利用しているということもあり、発言も自然に出てきます。つい長電話してしまいましたね、という穏やかな雰囲気で終われるところがまたいい。

最低でなくても、最高は目指さなくてもいい

これを整えることができれば、ある程度(2)で辿り着きたいゴールに到達することができます。最低な環境でのユーザーリサーチですが、最低限のユーザーリサーチは実施することができることがわかりました。

(3)の使い勝手を検証するためのユーザーリサーチをどうするべきかはまだ考えてもいません。でも、シンプルにできることは何か、を念頭に置くことができれば、できるような気がしてきました。シンプルに考えるためには、とりあえずやってみること。上に書いたように、古典的なやり方でも成立はします。時間をかけて理想的な環境を整えるよりかは、プロダクト開発におけるメリットはより大きいかもしれません。

最後に、ユーザーリサーチを計画し、実施する際に意識していることは、良いユーザーリサーチは良い結果が出たから良いというものではないということです。良いユーザーリサーチは、ユーザーが求めていた価値(機能やデザイン)が提供できたかどうかで判断すべきだと考えます。

はじめに

久しぶりに長論文を読んだ気がします。

この記事は、ドナルド・ノーマン氏が米カリフォルニア大学の Design Lab の教授であるマイケル・メイヤー氏と共に記した「21世紀におけるデザイン教育の変革」と題した論文の要約です。Twitter でご紹介したところ、多くのレスポンスがあったため、挑戦してみました。注意事項として、これは私自身の整理のためでもあるため、記載の情報にやや偏りがあります。また、直訳ではなく意訳の要素が多いと思います。それをご理解いただいた上で、ぜひご参考ください。

Changing Design Education for the 21st Century

Michael Meyer and I have written a guide for changing how designers are educated. The paper is published in She Ji in a special issue on design education. But, together with our friends at IBM Design, we intend to implement the strategy outlines in the paper.

ドナルド・ノーマン氏と言えば、デザイナーのバイブルとして親しまれている「誰のためのデザイン?」の著者でありながら、UX(ユーザーエクスペリエンス)という概念を提唱した著名人です。それから30年。彼は今、米カルフォルニア大学 Design Lab の代表としてデザイン教育の改革に力を注いでいるようです。この論文を読んで、彼の思考に少しばかりの変化があったことを読み解くことができました。

当時、彼は UX をこのように捉えていました。

“User experience” encompasses all aspects of the end-user’s interaction with the company, its services, and its products.(引用元:The Definition of User Experience (UX)

この論文では UX という言葉すら出てきませんが、「Human Centered Design(人間中心設計)」が何度も言及されていることがわかります。

Design addresses human needs and desires. Design generates the tangible and intangible build environment as well as the social environment.

彼は、デザインをユーザーと企業との関わりのみに限定することなく、その定義を幅広く扱うようにしていることがわかります。しかし、その根底にあるのは人々のニーズを知り、応えること。社会と人のためにデザインをする、と言う意味では変わってはいません。それこそが、他の領域とは一線を画すしているからです。これは、UX デザインに携わっている我々へのメッセージとしても捉えられると思いました。いつからか、UX はデジタルな世界に留まっていました。

デザイン学校の歴史

イギリスの The Royal College of Art は1837に設立。グラスゴーの School of Art は1845年に設立。アメリカの The Rhode Island School of Design は1877年に設立されるなど、「デザイン学校」の歴史は長い。その中でも最も有名なのは1919年にドイツで設立されたバウハウスかもしれません。バウハウスが一躍注目を浴びるようになったのは、「Bauhaus Curriculumn Wheel」と呼ばれる特徴的なカリキュラムにありました。

Teaching at the Bauhaus – Bauhaus-Archiv | Museum für Gestaltung, Berlin

This conceptual diagram showing the structure of teaching at the Bauhaus was developed by Walter Gropius in 1922. The programme places ‘building’ [Bau] at the centre of all the activities. But a regular course in architecture was only introduced at the Bauhaus in 1927. Only the most talented students were admitted to the architecture course.

代表的な科目に空間や色、マテリアル・デザインなどがありますが、人間に関することや、人とモノとの関係性といったデザインにおける根本的な部分が抜けています。創作や絵画としてのデザインは当時、社会に大きな影響を与えていたかもしれないが、今では違います。

なぜ、デザイン教育を見直すべきなのか?

現在のデザイン教育を見直さなければならない理由には、以下の課題があると考えられています:

  1. デザイナーとしての視点及びプロセスの最も貴重な要素の大半は、誰かに教えられることがほとんどないこと
  2. デザイナーを育成するための多くのプログラムには依然として、暗黙知の偏狭な視点や非効率な構造のままであること
  3. Fortune誌に掲載されている500社の内、10-20社(2-4%)のみが CDO に等しいポジションを設けている。それはつまり、デザイナーに活躍の場が与えられていないということ
  4. デザイナーはこれまで以上により大きな責任を任されるようになってきたこと

デザインには、Making のみではなく、Doing と Managing も加わり、デザインスタジオを超えて、ビジネスや社会を推進するために求められる意思決定の場にも、加わるようになってきたことが大きい。確かにデザインは複雑な領域です。なぜなら、実践的でなければならない上に、学術的でもなければならないからです。

デザインに特化した教育機関は、いくつかのコアとなる共通指針を定めた上で、それぞれの地域特性や人の得意不得意に合わせたアドバンスコースを設けるべきです。結果としてユニークネスが生まれ、デザインも多様になっていきます。

Design Thinking と Design Doing の両立

デザインを考えるということは、実践や導入方法を考えるということに等しい。これらは必ずしも一体でなければならなりません。その中でも、Implementation は特に重要です。なぜならば、世の中のリアリティを映し出すからです。つまり、より多くのデザインにおける意思決定が求められるということになります。デザインの実践が社会にもたらすインパクトを理解しばければ、考えること(Thinking)に閉じただけのデザインになってしまいます。

デザイン思考が正にそうです。

This misunderstanding of design as a technique rather than a discipline also generates team conflicts.

デザイン思考はテクニックではありません。この誤解が、チームの摩擦による混乱を招くきっかけになってしまうことが多いのです。このままでは、永遠に社会に通用することがないナレッジのままで終わってしまいます。

デザイン学校に分類される教育機関は、わかりやすいスタジオ形式の教育を中心にカリキュラムを組むのではなく、他の領域に通用する基礎知識の開発や実践者と呼ぶにふさわしいデザイナーを輩出する工夫をしなければなりません。コンピューターサイエンスやAI、ビジネス領域の影に隠れたままでよいのでしょうか?

21世紀に求められるデザイナー像

Doing が大事と述べましたが、いきなり社会に放り出して擬似プロジェクトを立ち上げ、結果を出せと言う教育は望ましくありません。メンターを設けてチームが混乱したときのガイドであったりプロセス全体のおける思考過程の評価を推奨します。。

デザイン学校には2つのタイプがあります:

  1. 独立したデザイン学校
  2. デザイン専用組織が備わっている一般の大学

どちらがいいと言うわけではありません。どちらにもメリットとデメリットがあります。どちらで学ぼうと、学べる範囲と抜けている範囲、そしてそれを十分か自覚するかどうかで、より社会に求められるデザイナーに近づけます。その「範囲」を定めるために、ここに社会にインパクトを与えるデザイナーに求められるであろうファクターを明記します:

メソドロジー

  • 人間中心設計(HCD)
  • 共創、コミュニティ・ドリブン・デザイン
  • 戦略設計、メンタリング、ファシリテーション

クリエイティビティ

  • 個人、そしてチームの創造性の担保

リーダーシップ

  • 1-2年のプロジェクト経験
  • プロジェクトリーダーを2-3年経験

リサーチ

  • 定性調査
  • 定量調査

ビジネス領域

  • ファイナンス
  • データドリブンな意思決定
  • セールスやマーケティングへの理解
  • サプライチェーン・マネジメント
  • 知的財産
  • ビジネスモデルの理解
  • 役員へのプレゼンテーション能力

メイキング力

  • ラピッド・プロトタイピング
  • 基礎的なプログラミング
  • システム思考

実験と検証

  • 実現可能性、検証可能性の考慮
  • 小さいテストで大きな成果を出す
  • バイアスの抽出と排除
  • ABテストのメリットとデメリットの理解

エシカル(倫理)

  • 社会(環境やコミュニティ)におけるデザイナーの役割
  • 人、環境、健康、安全への影響力
  • 個人へのリスペクト(性別、宗教、国籍など)
  • 企業のポリシーと法律の考慮

現実世界

  • 世界史
  • 心理学、社会学、文化人類学
  • エルゴノミクス
  • HCI(ヒューマン・コンピューター・インタラクション)

まとめ

改めて、デザイン教育の歴史は長い。そのルーツは創作にあります。時代と共に、デザインへの期待であったり、価値が発揮できる機会が飛躍的に増えました。有形を前提としていたデザインも、今では電子メディアやバーチャル・ディスプレイ、プレゼンテーションにまで及んでいます。ワーキング・パターンにも変化が見られます。1箇所で完結するようなスタジオ形式のデザインから、世界中に散って共創しながらそれぞれの仕事をすることだってできます。結果として、デザインがもたらすクリエイティビティや課題の発見と解決のためのフレームワークのおかげで、様々なコンテキストへの適応を可能にしてきました。

デザイン教育はこの変化についていくのに精一杯です。その理由としては、企業に限らずあらゆるコミュニティや官僚のマネジメントレベルにデザイナーが不在だからです。なぜ、デザイナーだけがこのような扱いを受けるのでしょうか?可能性として考えられるのは、幅広い領域の知識を備えて、あらゆる議論に参加し、組織や社会のニーズをまず理解する必要があるからです。

Here, design has largely been unsuccessful.

何もデザインだけが失敗してきたわけではありません。エンジニアリングといった非デザイン領域にも同じような過去がありました。それはつまり、デザインにもできるということです。これが分かったからには早急にデザイン教育の改革に着手すべきです。まずはデザインから離れて、あらゆる視点から共通化できそうな基盤を構築し、柔軟性が担保できるようなケースを想定して会話を続けるべきなのです。

先月末に NIJIBOX 主催のイベント「クライアントワークの現場で見えてきたUXデザインの変化とアプローチ」に登壇させていただく機会がありました。イベントのテーマである「UXデザインの変化とアプローチ」を考えたときに、何を話そうかパッと思い浮かばなかったのが正直なところです。今の仕事、つまり今の会社を選んだことのきっかけにつながってくるのですが「世界中のソフトウェア開発を変革する」ことを目標に取り組んできた内容こそ、自身が起こしていきたい変化であると捉えて、タイトルを「仮説駆動型UXデザインのススメ」としました。

仮説とは何かを考えてみる

この「仮説」という言葉が今回のキーワード。ここでこの記事を読んでいる皆さんに質問をしたいのですが、最近「仮説」という言葉を使った、または耳にしたのはいつでしょう?もう無意識に毎日のように使っている、あるいは聞いている人がいるかもしれません。「仮説を立ててPDCAサイクルを回そう」なんてことは日常茶飯事でした。ただ、これには昔から違和感を覚えていました。なぜかというと、これだけだとPDCAサイクルを回すことが目的になってしまっていて、そのための仮説を考えるという発想になってしまうからです。本来は逆なはずです。検証したい仮説がないと回すものも回らないと思います。

PDCAが前提としているのは、あくまで “想定外のことが起きない” 世界。つまり、「常に安定しており、かつ心理や感情など人間的要素が関わらない環境」の中で継続的に改善を繰り返して品質を高めていくというシーンで使うのであれば、確かに有効なのです。しかし、“いつも想定外のことが起きる” “昨日と今日で状況が変わる” といった「先がまったく読めない」環境では、そもそも最初の「P(計画)」の立てようがありません。そこでPDCAにこだわりすぎると、かえって物事が前に進まなくなる原因にもなり得るのです。

はじめに足並みを揃えたかったのは、

  • 仮説とは何か?
  • なぜUXデザインで仮説を立てる必要があるのか?

という問への考え方です。仮説を立てる前に、実はワンステップ挟む必要があると思っています。それは、現時点での最善の推測を洗い出すこと。私は Best Guess と呼んでいます。仮説は、それを検証可能な形式にしたものです。

例えば、明日の夕食を当ててみようとします。それはずばり、魚料理。これは現時点での Best Guess になります。確信はありません。今晩の夕食が肉料理だったため、明日は魚料理のはず。これが検証可能な形式にしたものです。仮説の立証がしやすくなりますよね。更に言うと、なぜそう思ったのかも併せて記載しておくと学びが多くなり、次に仮説を立てるときの題材となります。

ここで言いたかったのは「いきなり仮説を出せ!」と言っても、前提が整理されていないとそもそも立てようがないということです。

仮説を検証しないことのリスク

UXデザインにおける大きな失敗とは、作ったものが顧客に使われないことです。それはとても悲しいこと。チームはそれを避けるために日々努力をしています。そのはずです。そうならないようにするためには、なるべく早く検証する機会を設けること、そしてリスクを可能な限り減らすことを心掛けなければなりません。プロダクトの価値を検証し続けていくためには、その時々のリスクを特定して排除していかなければなりません。そのための仮説思考です。

作りたいものを考えるのは簡単なことです。難しいのは、作るべきではないもの考えることです。それが、網羅思考と仮説思考の違いです。先ずは作るために必要な作業を網羅しながら進めるアプローチと、作る必要がないものを特定してリスクを下げて進んでいくアプローチはこのような図を用いて説明しています。

この図で説明しているリスクとは、前述の使われないリスクのことを指します。プロダクト開発がユーザー不在のままだと、不確かな状態で進むことになります。結果はリリースするまでわかりません。そんなギャンブルのような世界から、早期に脱却すべきです。

SHOWROOM の前田裕二社長も同じことを言っていました。

例えば、宝の山が眠る鉱山を今から掘って、宝石を探り当てるレースをするとします。おそらくほとんどの人が「俺の筋力を見よ」って感じで、パワーで下から全部アナログに掘る、みたいなことをやる。掘ってる時は、自分でも仕事してる感すごくあるし、思考停止して掘り続ける。そんな中、我々は、掘らずに山の麓にある街の長老にヒアリングに行ったり、宝石のありかの地図や宝石探知機のようなものを探してきたり、まずは「見極め作業」に全神経を集中します

(引用元:最初にやるべきは血まなこで「宝のありか」仮説を立てる事|SHOWROOM 前田裕二

UXデザインを進める前に

UXデザインにおける仮説を設定するための軸と、仮説を設定する流れについてはスライドにまんま書いてあるので割愛します(記事の一番下に貼っている)。参考になれば嬉しいです。仮説を設定する軸は至ってシンプルだと思います。

このソリューションは、誰のどの問題を解決するために必要なのか?

これに答えられるレベルにまで、思い込みを検証可能な形式に落とす必要があります。「いやいや、何を今さらわかり切ったことを」という人もいるでしょう。私がこれまで仕事をしてきたクライアントにも、同じような反応をする人がいました。その度に、それが紛れもない事実だと、どこまで自信を持って言えますか?と常に聞くようにしています。わからなくても、不安に思っていても構いません。それが検証をしなければならない動機に繋がるのだから。

チームメンバーのみならず、ステークホルダーを交えた場で思い込みを洗い出すときが一番難しいと感じます。なぜなら、軸を例え設定していたとしても、自分の中でフィルターをかけてしまい、わかっていないことを挙げることに躊躇してしまう人が多いからです。最初は慣れが必要ですが、例えばペルソナを記述するワークで「メインのお客さんは都内に住んでいる会社員だと思うけどね」「地方にいるお客さんの方が利用者に多かったような?あれ、違う?(キョロキョロ)」と言った会話が生まれることもあります。それはとてもいいサインです。その場は思い込みで溢れています。

あとは、それをどんどん吸い取って、ペルソナだったり、ジャーニーマップに可視化するだけ。間違っていても、言ってもいいんだ!その空気をどう作り出すか。その場のデザインが実は大事だったりする。最後はエイやで決める必要はあるにせよ、ポイントはみんながどこを向いているかです。ズレているほど、検証のしがいがあります。誰が正しくて、誰が間違っているのか、ではありません。偉いからその人に従おう、ではありm線。答えはユーザーしかわかりません。

学びがチームを一つにする

これまで説明しているように、仮説を検証可能な形式に記述することで、結果を振り返るときにその仮説が正しかったのか、間違っていたのかが明確になります。結果をまとめる際に、仮説ステートメントと呼ばれるようなカードを作成し、結果を色で識別できるようにシールをその上に貼ってみたりすると、一目でわかるのでオススメです。

赤・・・仮説が間違っていた
黄・・・微妙だった、まだ検証が必要
青・・・仮説が正しかった

このような感じです。

検証を繰り返すことで、仮説の種となる思い込みは次々と湧いてきます。それも、よりシャープになってきます。そうさせているのは、検証のときに得られた学びなのです。考えもしなかった可能性が見えたとき、人は創造的になります。こうした方がいいんじゃないか、ああした方がいいんじゃないか。ちょっと待ちましょう。一つづつ検証していきましょうね。

最後に

プロダクト開発が進むにつれ、検証結果が追えなくなったりすることはよくあります。どこまでリスクを解消することができたのか、覚えていないとそれが逆にリスクとなります。そのために、私はこのようなボードにリサーチ結果を張り出して常に過去のリサーチ結果を参照できるようにしています。

スペースが足りなくなったら、せめて検証できた仮説と間違っていた仮説はキープするようにしてください。間違っていたことは、繰り返してはならないからです。捨てたらダメ、絶対。検証できた仮説もアーカイブしておくと後々振り返ったときに、同じ仮説が繰り返されていないかを再確認することができたり、ステークホルダーがチェックインしたときでもプロダクトの検証結果をすぐに説明することができるので、一石二鳥です。

イベントを主催してくださった NIJIBOX さんの公式ブログでもイベントレポートが上がっているので、読んでみてください。

デジタルカメラと iNSPiC REC

デジタルカメラで撮影した写真を Bluetooth でスマートフォンに転送できることはもはや当たり前な時代。デジタルカメラはスマートフォンや従来のカメラと比べて画質は高い(とはいえ、スマートフォンに遅かれ早かれ抜かれそう)。しかしながら、ネットに繋がっていないが故に撮影機材の主流はスマートフォンに奪われてしまいました。結果、デジタルカメラ市場の縮小は止まりません。その問題を解決するための手段として実現したのが Bluetooth 連携なのではないでしょうか。撮影した写真をその場で確認し、Instagram をはじめとする各種 SNS に投稿する需要に応えるためにあり、一つの価値でもあります。

ところが、最近購入したキヤノンの新しいコンセプトカメラ「iNSPiC REC」は少し違うようです。

さらに読む

はじめに

9月上旬に、 UX MILK 主催の「UX MILK Fest 2019」という大きなイベントに登壇させていただく機会がありました。「2軸で考えるプロダクトデザインのシンプルな意思決定方法」と題した当日のセッションでは「2x2」という手法をご紹介しました。セッションでお伝えしたかったのは、この手法を取り入れることで、様々な角度から軸となる考え方を UX デザイナー含めチーム全員が持つことができ、優先順位を徹底してプロダクト開発に関わるすべての意思決定をすることができるということです。

結果として、ステークホルダーや他のメンバーになぜ、その決定に至ったのかがロジカルに説明しやすくなり、説得力が生まれ合意形成がこれまで以上に効率化されます。この記事では、当日のセッションの様子を振り返ります。導入のハードルは低いと思いますので、当日参加できなかった人にとっても、お役に立てれば幸いです。(プレゼンテーションのスライドはこちらでもご覧いただけます)

なぜ 2×2 か?

このテーマを取り上げたいと思った背景には、以下の課題を多く耳にすることがあったからです。

開発したいデザインアイディアやソリューションが多すぎて、どこから着手していいかわからず、UX デザインが組織に浸透しづらい…。

2x2は、まずはじめに何を着手すべきかをチームで意思決定をする手助けをしてくれる手法です。 この2x2という手法を用いることで、UX デザイナーのみならずチーム全員が意思決定に関わることができ、ユーザー視点を維持することができるようになることで、上記の課題を解決してくれます。

2×2 の特徴

2x2は四象限のマトリクス構成になっています。意思決定をする際に必要となる観点を2軸(縦と横の軸)に設定することで、対象となる要素をセグメントごとにマッピングし、まずやるべきことをロジカルに決めることができます。これは、優先度を決めるときに効果を発揮します。

2つの軸で意思決定の対象となる要素を相対的にマッピングするとこのようになります。この絵では、4つの各セグメントごとの意味を説明しています。当然ながら、右上にあるセグメントはそれぞれの軸にとって優先度が高い要素が集まっているので、やらない理由はありません。逆に言えば、左下にあるセグメントは優先度が低いため、前述したデザインアイディアやソリューションはやらない方がいいという判断ができるようになります

ケーススタディ:ユーザーリサーチからアイディエーションへ

実際のプロジェクトでは、ユーザーリサーチの結果からアイディアを創出するために以下の2軸を設けて整理することができます。

ユーザーリサーチの結果であるインサイト(課題)をカードに書き出し、それぞれのセグメントにマッピングしていきます。尚、このときはチーム全員が参加することを推奨しています。なぜなら、マッピングには様々な角度から物事を捉え、優先順位を決める必要があるからです。

次に、解決すべき優先度が最も高いユーザー課題を対象に、アイディエーションのステージへと移っていきます。弊社ではデザインスタジオと呼んでいますが、プロダクト開発に関わるチームメンバー全員が参加し、ユーザー課題を解決するためのアイディアを発散する時間を設けます。

今度は以下を軸として、開発するソリューションを決めて次に進みます。

  • 縦の軸:ビジネス・インパクト(または価値)が高い / 高くはない
  • 横の軸:実現性が高い / 高くはない

2x2を用いることで、優先順位が高いユーザー課題とそれを解決するための最善のリューションが決定しました。今回はプロジェクトの2つの状況下における優先度づけと意思決定の一例をご紹介しましたが、軸は臨機応変に変えることができるため、プロジェクトのどのフェーズにも適応可能です。例)リスクが高い / 高くはない、確度が高い / 高くはない

2x2をより効率的に進めるためのアドバイス

  1. 右上に偏らないようにする
    よくあるケースは、すべてが大事と思っているが故にポストイットのほとんどが右上 偏ってしまうことです。2x2はあくまでも相対的なので、各セグメントに同じ数のポストイットを貼るように意識するとうまくいきます。
  2. 高い・低いといった二極化した表現を多用しない
    例えば、低い/少ないと言い切ってしまうと、そのセグメントにポストイットを貼るときに 戸惑ってしまいます。ステークホルダーによっては反発をくらいます。高くない/多くないといった 表現を用いることで、対立緩和を促すことができ、効率がよくなります。
  3. ポストイットを重ねない
    ポストイットを1枚1枚ボードに貼っていく際に、同じ優先度だからといってお互いを重ねないこと。必ず、ポストイットの上か下か、左か右に貼るようにして優先度の設定を徹底しましょう。
  4. まずは縦軸で整理し、そこから横軸で整理する
    いきなりそれぞれのセグメントにポストイットを貼っていくのは難しい作業です。 まず、縦軸に従って上から下まで一列で優先度を決めることをオススメします。そのあとに、 横軸に従って左右に貼っていくとスムーズにいきます。

まとめ:2x2を取り入れることによって得られた成果

積み上がったデザインアイディアやソリューションを計画的かつ論理的にアプローチする方法がなければ、半ば強引に社内政治や声が大きい人の判断で決まってしまって、結果ユーザー視点が抜け落ちてしまったりすることがあります。それでは、デザイナーの価値が十分に発揮されなくなってしまい、ユーザー視点を取り込むことは難しくなるでしょう。

  1. この手法を取り入れることで、対立する様々な軸とバランスを取りながら優先度を設定することができるため、なぜ、その決定に至ったのかがロジカルに説明しやすいため、プロダクト開発に関わる全ての人の理解が得やすくなりました。
  2. 「この機能を追加して」といった急な相談や依頼が来ても、2x2を組み直したり、他の要素と相対的に比較して着手する順番を改めて決めることができるため、優先度の取り引きが可能になりました。結果として、チームも柔軟に対応できるようになったと感じます。

前述したように、導入のハードルは低いと思いますので、ぜひ身近なものから少しづつ挑戦してみてください。無駄のないユーザーのためのプロダクトを開発するために、常に優先順位を徹底してみましょう!

 

 

約2年ぶりの、久々の投稿です。これよりも前の記事は、旧ブログ「UXploration」にあります。この空白期間、私は Pivotal Labs Tokyo というアジャイル開発コンサルティング会社でプロダクトマネージャーとして仕事をしています。今も変わらずにプロダクトマネージャーとして楽しい1日を送っています。

よく活動を休止していたバンドが充電期間を得て復活!というニュースを耳にしますが、この記事をいま書くにあたって同じような心境にいる気がします。言い過ぎかもしれません。この2年間はもちろんのこと、社会人になってから10年以上のキャリアを振り返ってみて、スティーブ・ジョブス氏が口にした、Connecting the Dots を実践してみようと思ったことがきっかけで、いまこの記事を書いています。

社会に出てから今日までの過程で、私が辿り着いたひとつの結論は、UX デザイナーからプロダクトマネージャーへのキャリアパスは、ありと言うこと。この先は、デザイナーのキャリアパスの先にあるものはなにか、という問いに対するひとつのアイディアになればいいな、と思っています。

 


これまで歩んできたキャリア

ざっくりまとめると、こんな感じです:

  1. UIデザイン:バナーや特集ページなどをデザイン
  2. IA(インフォメーション・アーキテクト):特集ページやウェブサイトの画面設計
  3. UX デザイン:ウェブサイト全体のリニューアルとプロジェクトマネジメント
  4. 経営企画:新規事業の立ち上げ
  5. UX 戦略:ユーザー視点におけるサービスの中長期戦略設計

いま振り返ってみるとプロダクトやサービス開発の中心に、徐々に近づいてきている気がしますね。

  • ウェブサイトのレイアウトや構造を設計していると「誰のために」つくるべきか?という問いにもっと関わって行きたいと考えるようになり、
  • UX デザインを基軸としたリニューアルを担当していたときは「なぜ」つくるべきか?という問いにもっと関わって行きたいと考えるようになり、
  • 新規事業をゼロから立ち上げた際は「正しいもの」とはなにか?という問いに関わって行きたいと考えるようになり、

ウェブサービスの中長期戦略を設計していたときは「どのように」つくるべきか?つくり続けていくべきか?という問いに関わって行きたいと考えるようになった。これは考えるときの癖なのですが、この頃から WHAT? FOR WHOM? WHY? HOW? と自分自身に問うようになり、この問いへの最適解を追求し続けたいという想いがあって、いまに至ります。

キャリアチェンジの火付けとなった(苦い)思い出

今日、サービスデザインの普及によってビジネスとデザインが少しづつ融合し始めているように思います。そのハーモニーは、私は当時から特に意識していたこともあって、いまとなってはとてもワクワクしています。しかし、ここにくるまではデザイナーとしてのキャリアが最も長かったこともあり、ユーザー視点の重要性を強く主張しすぎるあまりに、「ビジネス」とよく対立することがありました。

そして、キャリアのスタートは、組織体系として事業を横断してプロジェクトにコミットしていく、いわゆるコストセンターとして機能する横串組織に属していたため、制約がある中で自身の価値を発揮することができていないと、自分を攻めたときもありました。

  • ユーザーリサーチを実施するための時間とコストは確保できているのか?
  • この機能は本当にユーザーのためになるのだろうか?
  • リリースした後のユーザーの反応はちゃんと見ているのだろうか?

このような問いが常に頭をよぎり、敵対的、反抗的、と言われてもおかしくないコミュニケーションが続いていました。多分、多くの人に「あいつ、面倒くさいやつだな」と裏で言われていたんだと思います。ところが、いま思い返すと、自分自身がコミュニケーション先の相手のことを理解しようとしていなかったことに後になって気づきました。

そこで私は閃きました。自らが事業側にキャリアチェンジをしてプロダクトやサービス開発に関わっていけば、その理由がわかるかもしれない。それがきっかけとなって、プロダクトマネージャーという仕事に出会ったのです。

プロダクトマネージャーとしての脳トレ

改めて、私は今、私が UX デザイナーからプロダクトマネージャーにキャリア転換すきっかけとなった、サンフランシスコに本社を置く Pivotal Labs Tokyo と言う会社に勤めています。詳しい内容は Pivotal Labs Tokyo のブログ「Product Run」を覗いてみてください。

私がこれまで出会うことがなかった、Pivotal Labs が推奨している Lean XP というソフトウェア開発のメソドロジーは、自分がこれまで抱いていた課題感を払拭してくれた。特徴としては以下のようなものがあります:

  • ビジネスとユーザー双方の視点から解決すべき課題の優先度をつける
  • 解決すべき課題は、ユーザーの観点から特定する
  • 優先度はビジネスバリューが高い・低いに加えて ユーザーバリューが高い・低いで考える
  • 優先度が高く、かつ自信があるものから開発を着手する
  • 開発を小さく進めてリスクを最小限に抑える
  • ユーザーからのフィードバックをもとに続けるか/見直すか/止めるかを判断する

Pivotal Labs のプロダクトマネージャーはざっくり説明すると、ビジネスに責任を持つ人で、ビジネス上の課題を解決するためのプロダクトとはなにか、というマインドを常に保つ必要があります。このマインドへのシフトは現在も進行形だが、最初の1年よりも大分慣れてきました。「デザイナー歴が長いのに、いきなりキャリアチェンジをして苦しくない?」これはよく聞かれる質問だが、もちろん、一人でなんとかなるような仕事ではありません。周囲の助けがあって、支えられてきている。でも、いいものを作りたいという一心でキャリアを歩んできた結果、ここにいるのだから、全然苦ではないです。

終わりに

Pivotal Labs のプロダクトマネージャーとして働き初めて約2年、過去に私が直面していたビジネスニーズとユーザーニーズの対立によって生まれる摩擦を最小限に抑えるためにはどうすればいいか。その答えがぼんやりと見えてきた気がします。どちらが有利という会話ではなく、可能な限り、双方にとっての Win-Win な状態をつくりだすにはどうすればいいか、というコミュニケーションが中心となっていること肌で感じることができています。

視点は違えど、ユーザーの課題を解決しなければサービスは成功しない、という共通認識は保ちつつ、全部まとめてはできないというサービス開発の前提に立つことが最も大事で、「ならばどれから着手していこうか」というその場で発生する会話は対立ではなく、協議に等しくなっていくべきです。ユーザーにとって価値のあるプロダクトやサービスの開発と運営に関わっている人であれば、誰もが望むこと。ユーザーに一番近しい立場にいるデザイナーのキャリアパスの選択肢として、プロダクトマネージャーは全然ありだと断言できます。むしろ、仲間が欲しい。興味があれば、飲みにでも行きましょう。キャリアの原点に立ち戻れる場で。