
プロダクト開発やマーケティングをサポートするキャンバスツール5選
目次
キャンバスとは?
プロダクトやサービス開発における様々なズレを解消するためのツールの一つとして「キャンバス」があります。この記事を読まれている方であれば一度は耳にしたことがあるかもしれませんが、Business Model Canvas(ビジネスモデル・キャンバス)や Lean Canvas(リーン・キャンバス)などが有名です。キャンバスは、複雑な情報を一枚絵に構造化してわかりやすくしてくれているので、意思決定を加速させてくれる非常に便利なツールです。
他にはどんな便利なキャンバスがあるんだろう?と興味本位で2〜3年かけて情報収集をしてみたところ、約200種くらいありました。時代の変化と共にインスピレーションを受けながら増えていったことを想像すると、多分もっとあるでしょう。それらは自身の Pinterest でコレクションとして今も集めています。キャンバス集めは、もはや趣味です。
その中にはあまり知られていないけれども、あらゆる課題を解決してくれるキャンバスが沢山埋もれています。ただ、あまりにも数が多いので、今回はその中でも自分の中でヒットだった5つのキャンバスをご紹介したいと思います。
- Social Media Strategy Canvas(ソーシャルメディア戦略・キャンバス)
- The Brand Canvas(ブランド・キャンバス)
- Team Canvas(チーム・キャンバス)
- Project Canvas(プロジェクト・キャンバス)
- Workshop Preparation Canvas(ワークショップの企画のためのキャンバス)
それでは一つ一つ見ていきましょう。
1. Social Media Strategy Canvas
ソーシャルメディアは今となってはビジネスにとってクリティカルな、かつゲームチェンジャーともなり得るマーケティングチャネルです。なぜなら、ソーシャルという文字通り、自社とクライアントやユーザーを繋ぐ大事な接点となっているからです。プロダクトマーケティングの観点からも、PSF(Product-Solution Fit)を探る上で重要な役割を果たします。

- どのソーシャルメディアから始めればいいかわからない
- どれが相性がいいのかわからない
- 何を投稿すればいいかわからない
- 以前かじったことがあるけれど、うまくいかなくて辞めた
このキャンバスは、上記のような身近な課題をシンプルに解決してくれます。プライベートではソーシャル・ネットワーク・サービスを使い倒しているけれども、事業戦略の位置付けでいざ初めてみるとなると、どうしたらいいかわからないときがあります。自分自身も以前 Facebook マーケティングをやったことがありますが、四苦八苦してしまい、今これがあったら便利だったんだろうな、と思いました。
このキャンバの考案者によると、3ヶ月もすれば効果が見え始めるとのこと。Twitter のフォロワーが何千人増えたとか、ソーシャルメディア経由の収益をデイリーで挙げることができた、とかとか。
キャンバスにまとめられている項目一覧:
- ユーザー情報(デモグラに加えて、好むブランドや興味など)
- 月間目標(何を達成したいか、何をPRしたいか)
- 目標を達成するための月次・週次・日次タスク
- 投稿する内容やコンテンツ
- 投稿するタイミング(過去のデータを元に最適化)
- 投稿する頻度
- 投稿先のプラットフォーム
テンプレートのダウンロード:https://www.marketingsolved.com/create-a-social-media-strategy/
2. The Brand Canvas
ブランド戦略という言葉を耳にすることがありますが、ブランドの範囲がかなり広いため、どのようなアクションが求められ、実行されるべきなのかイメージが湧かないときがあります。
ブランドと聞くとロゴ、つまりは CI を真っ先に想起しますが、モノよりもコトの時代となった今、Apple Watch に代表されるようにシンボルだけではなく、人の生活をより豊かにするためのストーリーであったり、人々の生活に根付いたコミュニケーションが求められます。

このキャンバスは、それらを構成する要素を細かく分解して一つのブランドを作り上げることができると思います。ガイドラインに等しい項目もあるため、デザイナーやマーケティングの部署と協業しながら埋めていくといいかも?
キャンバスにまとめられている項目一覧:
- ストーリー
- プロダクトが置かれているポジション(インセプションデッキのような扱い)
- 顧客への約束ごとを一言で
- ブランドを擬人化した時のパーソナリティ
- ペルソナ
- ストーリーボード(ソリューションがユーザーの目標をどのように助けるか)
- シンボル
- タイポグラフィ
- カラーパレット
- ロゴ
- 使用する画像
- 戦略
- 認知度向上のための施策(チャネルやコンテンツなど)
- 収益につなげるための施策
- マイルストーン(メッセージを発信するタイミングなど)
- 継続的なコミュニケーション手段(シェアの促進など)
テンプレートのダウンロード:https://www.ignitionframework.com/the-brand-canvas-how-to-create-and-communicate-a-compelling-brand/
3. Team Canvas
チームワークはプロダクトの成功を左右します。
全社のミッションやプロダクトの戦略を共有することはチームのコミュニケーションを円滑に進めるために、最低限必要であることは誰もが認識していることだと思いますが、実は普段会話しない内容がチームワークを良くする上で大事だったりするのではないでしょうか。これは自分の経験なのですが、個人には強みや弱みがあり、やりたいこととやりたくないことがあり、それを理解せずに進めてしまうと本当のチームとして機能(ワーク)しないことがあります。自分自身もやりたくないことがあるので、それは周囲に明示するようにしています。

そこで目に止まったのが「Team Canvas」です。これはワークショップ形式で、約1時間ほどかけてチーム全体でまとめると効果的だそうです。結構踏み込んだ会話が求められるので、アイスブレイクも兼ねて進めるといいかもしれません。
キャンバスにまとめられている項目一覧:
- チームメンバーと役割
- チーム共通のゴールと個人としてのゴール
- 目標を達成するために活かせる強みやソフトスキル
- チームと個人の弱みと直面しうる課題
- チームとしての行動規範
- 個々のニーズやチームへの期待
- チームが大切にすべき価値
- 目的(なぜしているのか、何をしようとしているのか)
テンプレートのダウンロード:http://theteamcanvas.com/learn/
4. Project Canvas
「Project Canvas」は、プロジェクト全体におけるコミュニケーションをシンプルに、そして明確にするためのキャンバスです。プロジェクトのキックオフや、プロジェクト途中のチェックイン、そして振り返りの際に利用することを想定されています。インセプション・デッキと重複する要素はあるものの、正式文書ではなくビジュアル化することで、相互理解を促すことができるのでいいなと思いました。

これも自身の経験ですが、過去のプロジェクトではこのキャンバスと似たような項目をワークショップを通じて外部化したものをプリントして、壁に貼り付けたりしました。データとして格納するよりも、目に見えるところにあるとプロジェクト中に迷子になりづらいので、おすすめです。また、希かもしれまぜんが、複数のプロジェクトにアサインされている状態の場合、より効果が発揮されるかもしれません。
キャンバスにまとめられている項目一覧:
- プロジェクトの目的
- プロジェクトのスコープ
- 成功指標(プロジェクトの成功を定めるための指標)
- 主要なマイルストーン
- 主なタスク(やるべきこと、方針など)
- アウトカム(最終的に成し遂げられるもの、成果)
- チームメンバー
- ステークホルダー
- ユーザー
- リソース(予算など)
- 制約事項(外的要因による弊害など)
- リスク
テンプレートのダウンロード:http://www.projectcanvas.dk/
5. Workshop Preparation Canvas
過去にワークショップを企画並びに実施した経験はありますか?
その時その時の関係者を巻き込みながら、プロジェクトを効率的に進める上で様々なワークショップを開くことがあります。ワークショップの落とし穴は、ただ楽しいで終わってしまわないことです。楽しいのはいいことなのですが、目標が達成できたかどうかがワークショップの成功を判断する上で重要となります。このキャンバスでは、ワークショップを成功させる上で必要な「6つのP」をまとめてくれています。

ロジスティックな部分など、基本中の基本についての明記を促していますが、疎かにしてしまうことがたまにあるので埋めておいて損はなさそうです。
キャンバスにまとめられている項目一覧:
- Purpose(目的、なぜやるのか?)
- Practicalities(いつ、どこでやるのか?どのようなセットアップでやるか?)
- Participants(参加者はだれか?各人のニーズは何か?)
- Products(事前に準備すべきものは何か?題材は何か?)
- Process(アジェンダは何か?)
- Principles(どのように意思決定が行われるか?ワークショップの価値は?)
テンプレートのダウンロード:https://tobysinclair.com/2018/01/14/workshop-preparation-canvas/
まとめ
こうやって一つ一つのキャンバスに目を通してみると、キャンバスというフレームワークはとても奥が深いです。
今回のように、高度な思考技術によって整理された構造をリバースモデリングすることで、意図が汲み取りやすくなり自分自身の頭の整理にも役立ちます。また、いざ埋めようとしても、埋められない項目があったりします。つまりそれは、情報が欠落しているということです。欠落しているということは、失敗する可能性があるということです。キャンバスのいいところは、一枚絵にすることで、欠落した情報を見逃すことができないところだと思います。
一つでもいいので、試しにやってみませんか?