
ゲーム「INSIDE」が示す哲学的なメッセージ
この記事には一部過激な表現が含まれます。
目次
INSIDEとは?
「INSIDE」は操作は至ってシンプルな横スクロール型のゲーム(Nintendo Switch, iOS, PS4)。左右フリックでの移動、ジャンプ、アクションのみでプレイできちゃいます。単純操作ではありますが、中身(まさにINSIDE)は想像を絶します。トレーラーを見ていただくとわかりますが、説明皆無の漆黒な世界で繰り広げられる少年の逃避行です。何者かに追われている「らしい」その足取りにはどんな意味があるのか?問いはそこから始まります。このゲームは、ただのゲームではないです。自分は哲学だと思っています。
普段はスマホゲームを滅多にしない自分ですが、これはぜひ勧めたい。
人間は孤独な生き物だと思っています。
そもそも周りに人がいなければ、誰も孤独とは思わないでしょう。現代は、孤独との戦いです。主人公である少年も、見方によっては孤独です。でも、彼は孤独から逃れようとはしません。説明も何もなく、突然この世界に放り出され、ただただ進む。少年に自分を重ねてみると、孤独への向き合い方は変わります。それだけ、メッセージ性が強い作品となっています。
INSIDEが面白い4つのポイント
1. プレイ中の状況からストーリーを読み取る
ゲームとは言え、類似する他の作品のようにステージという概念が不足しています。ナラティブのように、全てがつながっていきます。そのため、クリア条件は不明。エンディングは想像がつきません。終わりも、わかりません。そんなゲームは実はあったのです。
不確実な状態に人は陥ると、どうなるのか客観的に分析すると大変興味深いです。ストーリーは、少年と共に前に進みながら、過ぎていく時間と変わっていく背景から明らかになっていきます。INSIDE に、真相に近づいていくにつれ、プレイしている最中の集中力は凄まじいと自分でも感じます。
2. セリフがなく、舞台だけで語られる
少年は孤独なのだから、他人と会話する場面はありません。そもそも少年や他の登場人物は顔も表情もありません。喜怒哀楽が読めないのが、さらに孤独感を際立たせます。ただ、少年は無心で前に進んでいる訳ではないことは、伺えます。彼から聞こえてくるのは、息切れだけ。体力の消耗故の息切れかもしれないし、緊張故の息切れかもしれない。そう捉えるだけで、舞台の見方は変わってきます。
3. 突然生まれる主体性
孤独と向き合い、ただ突き進む少年に明確な意思はあるのでしょうか?少年に問いたいが、少年は意思表示をしてくれません。当たり前だけど。そうなると、一緒に突き止めたいという思考に変わっていきます。最初は不気味で、なぜ少年が、と突っ込みどころがたくさんありますが、様々なトラップを乗り越えていく少年を自然と応援している自分がいることに気づきます。そこが、面白い。自分の中から何かが芽生える、正にINSIDE。
4. ゲームオーバーがない
少年にはライフがないのです。ないということは、増えもしないし、減りもしない。つまり、死んだところから何度もゲームを再開することができるということです。Re:ゼロ の「死に戻り」と同じ発想です。それを知った途端、まずはこのゲームにおける死への考え方が変わります。死に戻るする少年に憑依をすると、死を想うようになります。メメント・モリです。
強いメッセージに心が揺らぐ
このゲームには、非人間的かつ非倫理的な描写が多いです。動物の死骸や人間の死体を道具のように平気に利用する様子は、人間としての倫理観が問われます。なぜ、こんなことができるのでしょうか?自分が良ければそれでいいのでしょうか?そう問うことになります。それが、ブーメランのように自分に返ってきます。
加えて、死に直面するシーンに至っては、首が折れたり、狂犬に噛み殺されたり、溺れてしまって死ぬことがほとんどです。それらは全て、我々にとって身近に感じることができます。死に戻りを繰り返す度に、死ぬことに慣れていく恐ろしさがあります。それでも尚、恐怖や漆黒の世界を超越した描写が美的に描かれているため、どれも美しく見えてきます。
少年に、生きているって素晴らしいことだ。前に進め!と励まされているかのよう。このご時世だからこそ、INSIDE をプレイすることをおススメします。