デジタルカメラと iNSPiC REC

デジタルカメラで撮影した写真を Bluetooth でスマートフォンに転送できることはもはや当たり前な時代。デジタルカメラはスマートフォンや従来のカメラと比べて画質は高い(とはいえ、スマートフォンに遅かれ早かれ抜かれそう)。しかしながら、ネットに繋がっていないが故に撮影機材の主流はスマートフォンに奪われてしまいました。結果、デジタルカメラ市場の縮小は止まりません。その問題を解決するための手段として実現したのが Bluetooth 連携なのではないでしょうか。撮影した写真をその場で確認し、Instagram をはじめとする各種 SNS に投稿する需要に応えるためにあり、一つの価値でもあります。

ところが、最近購入したキヤノンの新しいコンセプトカメラ「iNSPiC REC」は少し違うようです。

カメラは繊細だから、大事にかばんへしまっておく。なんて、もったいない!取り出す間も惜しいほど、毎日は撮りたい瞬間にあふれているから。カメラをかばんにひっかけて、“撮りあそび”に出かけよう。

撮影した写真を取り入れるためには、専用アプリを予めダウンロードしておく必要があり、不思議ではないのだが問題はその次です。

写真が取り込めないんです。そもそも、撮影した写真が反映されないんです。

iNSPiC REC アプリの Bad UX

アプリの前評判は知っていたのですが、それ以上にカメラのコンセプトに魅力を感じ、掛けてみたのだが…納得してしまった。調べてみたところ Bluetooth だけではなく、WiFi も同時に接続する必要があるため、カメラとアプリ間のペアリングが不安定になり、読み込めないケースが多々あるとのことでした。

不便だ。これは、ユーザー体験を設計する上でとても致命的な障害だ。カスタマージャーニーにおけるチャネル / デバイス / タッチポイントこそ、サービスデザインに影響を与える非常に重要なポイントとなります。

それから1週間が経過し、サポートセンターのおかげで WiFi が安定している環境(私の場合は家)であれば、最低限の期待である写真を取り込めることができました(やった!)。障害となっていた理由は、よくわからないけれども。このままでは改善ができないのではないか、と疑問に思った一方で、ジャーニーの続きに進めることができたので、良しとしましょう。本来であれば冒頭で話したように撮影した写真は都度確認して起きたいところですが、この不便さが意外にも「懐かしさ」を演出してくれます、

不便さが演出する「懐かしさ」

スマートフォンやデジタルカメラよりも前、カメラがフィルムだったときは何が取れているのかは現像してみないとわかりませんでした。インスタントカメラもそうですね。家族で旅行に出かけたときに、子供ながらに撮影を気軽にできることに喜びを感じ、現像して写真が出来上がるまでの期待と、いざ写真となって見ることができたときの答え合わせがたまらなく好きでした。

iNSPiC REC はそれを思い出させてくれます。最近は iNSPiC REC を鞄の中に常に入れており、ふと目に入ってきた不思議な光景や気になるモノ、そして見逃せない瞬間を狙って直ぐに取り出して写真を撮っています。何を撮ったかは帰ってからのお楽しみ。フィルムではないですが、写真を読み込み中の時間がワクワクします。ボヤけていたとき、苦笑いをします。撮影した背景がわからない写真が出てきて思い出せず、不思議に思ったりします。新たな発見があったりもします。

iNSPiC REC は不便です。

でも、それは製品のせいにしているだけに過ぎません。工夫をしてみたら、別の良さを発見することがあります。自分は第一発見者かもしれない、という勘違いはあるかもしれないけれど、発見までに至る過程はとてもクリエイティブだと思います。これは、デザインにおいていいヒントになるかもしれません。

今回わかったこと。それは、不便は本来は豊かなのかもしれないということです。不便性に目を向けたほうが、思いもよらない発見があります。それがデザインの種になって、次に活かされていくといいなと思います。私は iNSPiC REC をこれからも使い続けていきます。この先に自分と製品にどのような変化があるのか、楽しみでもあるからです。


Design+ は世の中の不便利なデザインの探究(Inconvenient Design)、並びに人が取ってしまう考えなしの行動(Thoughtless Acts)に目を向けることで得られた気付きをもとに、デザインへの新たな向き合い方を模索する私の個人プロジェクトです。Twitter はこちら:https://twitter.com/DesignPlusAny